気づけば太陽は雲の下に沈み、
あたりは透明なレモン色に包まれている。
頭上では相変わらず、星々が乱暴に光っている。
私は歩くことにも泣くことにも疲れ果て、
草の中にうずくまっている。
ダウンジャケットの丸めた背中から、
風がちょっとずつ体温を盗み、
代わりに無力感を吹き込んでくる。
小さな体が、死に置き換わるように重くなっていく。
____でも、これからだ。
離れたところから自分を観察しているような気分で、
私はふと思う。
ここからが、この夢のハイライトだ。
私の体は凍え、不安と寂しさの果てに心も麻痺していく。
もうどうでもいいやと、諦めが全身に広がっていく。
でも____。
さく、さく、さく、と、遠くから小さな音がする。
誰かが草原を歩いてくる。
ちくちくと尖って固かったはずの雑草は、
その人が踏むとまるで新緑の季節のような優しく柔らかな音を立てる。
両膝に埋めた顔を、私はあげる。
足音が近づいてくる。
私はゆっくりと立ち上がり、振り返る。
目の曇りを拭き取るように、
ぎゅっぎゅっと強くまばたきをする。
揺れる草の向こうに、
夕焼け色の薄紙に透かしたような人影が見える。
ゆったりとした白いワンピースが風に丸く膨らみ、
金色の光が長い髪を縁取っている。
ほっそりと大人びたその人の口元には、
夜明けの細い月みたいに薄くカーブした笑みがある。
「あなたの下の名前(平仮名)」
名を呼ばれる。
そのとたん、耳から、指先から、鼻の頭から、
その声の波が触れた先端からたちどころに、
温かなお湯に浸ったような心地好さが全身に広がっていく。
さっきまで風に混じっていた雪片は、
いつのまにかピンク色の花びらとなってあたりに舞っている。
そうだ。この人は。この人が。
ずっとずっと探していた____。
と呟いた時には、
私はもう夢から覚めていた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!