医療センター
基地の奥にある、静かな施設だった
白い壁
整えられた床
柔らかい照明
外の戦場とはまるで違う世界
ここは、戦闘で傷ついた隊員を回復させる場所
体だけではない
心も回復させるための場所だった
森での戦闘から数時間後
らっだぁ運営部隊の五人はここへ運ばれていた
あの戦いは激しかった
大量のモンスター
危険個体
そして――
金豚きょーの精神崩壊
仲間たちは彼を止めるために動き、
全員が限界に近い状態だった
体力も
精神も
だから今は強制的に休息が与えられている
医療センターの一室
窓から柔らかな光が入っている
部屋の中央
ベッドに座っている人物がいた
金豚きょー
黒翼は出ていない
能力の気配も静かだ
彼はただ――
両手を見つめていた
長い時間
言葉もなく
その手は、ついさっきまで森を破壊していた
闇刃を放ち続けた手
仲間を巻き込みかけた手
その記憶がまだ頭の奥に残っていた
森の景色。
倒れる木々
仲間の声
自分の笑い声
「アハハハ」
その狂った声
思い出すたびに胸が重くなる
その時
扉が静かに開いた
金豚きょーは顔を上げる
部屋に入ってきたのは見慣れた仲間たちだった
らっだぁ
みどり
レウクラウド
コンタミ
いつものメンバー
いつものチーム
最初に近づいたのはレウクラウドだった
優しい表情
ゆっくりと歩く
彼の手から淡い光が生まれる
能力――
「ガストの涙」
柔らかな光が部屋に広がった
この魔法は体の傷を癒すだけではない
精神も少し安定させる
強制的に落ち着かせるわけではない
ただ、心を整える手助けをする
光は静かに金豚きょーを包んだ
金豚きょーの呼吸が少しずつ落ち着いていく
肩の力が抜ける
握っていた拳がゆっくり開く
金豚きょーは小さく言う
レウクラウドは微笑む
その横で
コンタミが小さく手を動かす
水が現れる
小さな水球
それがゆっくりと回る
ぽた
ぽた
静かな水の音
この音は精神を落ち着かせるためのものだった
コンタミの能力は戦闘だけではない
こういう場面でも役立つ
医療センター自体もストレス回復のために作られている
静かな音
落ち着く光
ゆったりした空間
それが少しずつ隊員の心を回復させていく
しばらく誰も話さなかった
静かな時間
窓の外では夕方の光が広がっている
金豚きょーは床を見ていた
言葉を探しているようだった
やがて
小さく言う
その声はとても弱かった
しかし
すぐに声が返る
即答だった
迷いがない
金豚きょーは目を伏せる
らっだぁは頷く
そして続ける
その言葉はとても簡単だった
けれど
金豚きょーの胸に静かに響いた
少しの沈黙
金豚きょーはゆっくり話し始める
視線はまだ下を向いたまま
部屋が静かになる
仲間たちは知っている
でも
彼が自分から話すのはこれが初めてだった
言葉が止まる
呼吸が浅くなる
それでも続ける
あの日の記憶
何度も思い出してきた
戦闘のたびに
空を飛ぶたびに
闇刃を作るたびに
“また同じことが起きたら”
その恐怖
それがずっと心の奥に残っていた
みどりが小さく言う
静かな声
金豚きょーは首を振る
それが真実だった
誰も責めていない
でも自分だけが自分を責め続けていた
言葉が止まる
森の光景が浮かぶ
暴走
破壊
仲間の声
コンタミが静かに言う
落ち着いた声
レウクラウドも続ける
みどりは少し照れながら言う
その言葉は短い
でも
本気だった
らっだぁは腕を組む
そして言う
その言葉はとてもシンプルだった
だが
何よりも強い言葉だった
金豚きょーは少し驚いた顔をする
そして
小さく笑った
その笑いは以前の狂った笑いではない
普通の笑いだった
金豚きょーは頷く
それは分かっている
どんなに後悔してもあの日は戻らない
らっだぁは続ける
レウクラウドが微笑む
コンタミも頷く
みどりは安心した顔をしていた
金豚きょーは深く息を吸う
胸の奥にあった重さが少しだけ軽くなっていた
そして言う
その言葉は静かだった
でも
確かな決意があった
森は壊れた
街も少し傷ついた
それは消えない事実
でも――
仲間は残っている。
そして彼は前を向くことを選んだ
らっだぁ:35
みどり:30
金豚きょー:40
レウクラウド:38
コンタミ:34
第2章 守れなかったもの 𝑒𝑛𝑑
↓
第3章 離れないで












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!