腰のあたりをふわっと掴まれて、踊るような身のこなしで、あっという間に傘の中に引き込まれ、気がつけば肩を抱かれていた。
耳元で、ゆっくりとした低い声で囁かれ、力が抜けてしまった。
送るだけだ。そう送るだけ。
私は言葉もなく、子供のように、こくん、とうなずいた。
身体中の神経が集まってしまったかのように、抱かれた肩がドクンドクンと脈打っている。
あれほど気になっていた靴底の事もどうでもよくなっていた。なぜだろう足元がふわふわする。まるで魔法がかかったようだ。
2人とも無言で歩いて行く。
まさか3分前に出会ったようにはみえないだろう。あまりに大胆なことをしている自分がおかしくなってしまった。
この行動、女の扱いに慣れているとしか思えない。
あの角を曲がればすぐにマンションのエントランスに着く。
普段なら、こんなこと絶対にしないのに、だからなのか、このままもっとこうしていたい、なんて思ってしまった。
どうかしている。
少し大きめの声で、できるだけキッパリと言った。
ここまで、ちょっと楽しませてくれた謎の若い男。私の心に入ってくるのはここまで。
これで、終わり。
エントランスに着いて、腕を外して離れる。
ふと男の方をみると、背中から肩にかけて水が滴っている。
考えたら、180センチ近い身長だ、大人が2人傘に入って充分なわけがない。彼はずっと、濡れていたんだ。
そんなことも気がつかなかった。
私は
言い訳を見つけてしまった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。