第31話

悪ドルの輝き
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2025/07/22 05:40 更新
バトラパーティの興奮が冷めやらないまま、バビルス学園は次の大きなイベントへと向かっていた。

それは、悪魔界で絶大な人気を誇る「悪ドル」の特別ライブだ。

年に一度、学園で開催されるこのイベントは、悪ドルたちが

その歌とパフォーマンスで悪魔たちを魅了する、まさに魔界の祭典だった。
ライブ会場となった学園の特設ステージは、開演前から悪魔たちの熱気に包まれていた。

多くの生徒たちが、それぞれの推し悪ドルのペンライトやグッズを手に、色めき立っている。

入間とアリス、そしてクララもまた、このイベントを楽しみにしていた。

特にクララは、目を輝かせながらステージを見つめている。
ウァラク・クララ
ウァラク・クララ
うわー、クロム様だー! かっこいいー!
クララが指さす先には、巨大なスクリーンに映し出された、悪ドル「ミドリアン・クロム」の姿があった。

ミドリアン・クロムは、悪魔界で絶大な人気を誇るトップ悪ドルだ。

そのカリスマ性あふれるパフォーマンスと、ミステリアスな雰囲気で、多くの悪魔を虜にしている。

アビスは、入間の隣で静かにステージを見上げていた。
鈴木入間
鈴木入間
アビスも、クロム様に興味あるの?
入間が、隣のアビスに話しかける。アビスは首を傾げた。
アビス
アビス
…特にないかな。
アビスの素っ気ない返事に、入間は苦笑した。

しかし、アビスの視線は、確かにステージ上のクロムへと向けられていた。
一方、舞台裏では、ミドリアン・クロムことアロケル・ケロリが、緊張した面持ちで本番を待っていた。

普段は物静かで恥ずかしがり屋のケロリだが、悪ドルの衣装を身につけ、

スポットライトを浴びると、まるで別人のように輝きを放つ。
クロケル・ケロリ
クロケル・ケロリ
ふぅ……大丈夫、私ならできる……!
ケロリは、控え室で深呼吸を繰り返す。

彼女のマネージャーである悪魔が、最終チェックを行う。
―――
ケロリ様、準備はよろしいですか? もうすぐ出番です!
ケロリは、気合を入れ直すと、ステージへと向かう扉の前に立った。

彼女の心臓は高鳴っていたが、同時に悪ドルとしてパフォーマンスできる喜びも感じていた。
クロケル・ケロリ
クロケル・ケロリ
……行くぞ、クロム
そう呟くと、ケロリは一歩を踏み出した。

会場の熱狂は、最高潮に達した。スポットライトがステージ中央に集まり、ミドリアン・クロムが登場する。

その瞬間、会場の悪魔たちは、割れんばかりの大歓声を上げた。
「きゃあああああ! クロム様ー!!」
クロムの歌声が、会場に響き渡る。その力強く、しかしどこか儚げな歌声は、悪魔たちの心を鷲掴みにした。

その頃、会場の警備担当として客席を見回っていたカルエゴ先生も、クロムの登場に目を細めていた。

彼は、クロムのパフォーマンスを冷静に分析している。

そして、その歌声と動きに、どこか見覚えのある「違和感」を感じていた。

(……この動き、どこかで見たような……)

カルエゴ先生の脳裏に、自身のクラスの生徒たちの姿がよぎる。

しかし、まさかあの生徒が、こんな人気悪ドルだとは、カルエゴ先生のプライドが許さなかった。

彼は、自分の考えをすぐに打ち消し、再び冷静に警備の状況を確認し始めた。

だが、その視線は、時折、ステージ上のクロムへと向けられている。

オペラは、そんなカルエゴ先生の様子を、楽しげに眺めていた。

オペラは、もちろんミドリアン・クロムの正体がケロリであることを知っている。
オペラ
オペラ
カルエゴ先生、どうかなさいましたか? 
クロム様のパフォーマンスに、見入っていらっしゃるようですが?
ナベリウス・カルエゴ
ナベリウス・カルエゴ
馬鹿なことを言うな。警備の状況を確認しているだけだ。
ただ……あの悪ドル、どこか見覚えがあるような、ないような……
カルエゴ先生は、眉間の皺を深く刻みながら、そう答えた。

オペラは、そんなカルエゴ先生の反応に、フフッと笑みを深めた。

(ええ、ええ。貴方はまだ気づかないでしょうね、カルエゴ先生。

 貴方の目の前で輝いているのが、貴方の教え子だということに)

ステージ上のミドリアン・クロムは、悪魔たちを熱狂させ続けている。

その華麗なパフォーマンスの裏には、普段は目立たない一人の生徒、クロケル・ケロリの努力と、

悪ドルとしての強い意志が隠されていた。そして、その事実に、アビスもカルエゴ先生も、まだ気づいていない。

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