第17話

入れ替わりな1日〜カリスト編〜
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2026/02/17 15:07 更新
どれだけ一緒にいたと思っているんだ。ひと目見た瞬間に目の前の仲間が本物ではないことに気づいている。
幸いなのは最愛のあのお方はそのままだということかな。




カリスト
カリスト
ベス、アイスは1日ひとつまでの約束だろう?
ベス
ベス
え、そ、そうなの……そうだったな。
……全く。なりすますならもっと詰めるところがあっただろう。
ギータは何故か己の尻尾を追いかけ回して遊んでいる。……尻尾の存在に初めて気がついた仔犬か?
楽しそうだからそっとしておこう。
ドラン
ドラン
カ、カリスト!う、腕相撲しよう!
腕相撲……?
カリスト
カリスト
受けてたとう。
自分で言うのもなんだが僕の腕はドランのそれよりかは遥かに華奢だ。負け試合に挑みたくはないのだが。
ギータ
ギータ
レディー、
いつの間にかやってきたギータとベスが審判を取り仕切るらしい。
ギータ
ギータ
ゴー!!
カリスト
カリスト
!?
ギータの合図と同時にものすごい力が組んだ手のひらに伝わる。己の腕力で押し返せるだろうか。
だが、相手はドランといえど偽物だ。体格は同じだろうが偽物に負けるのは些か不服だ。
僕のありったけの力を腕に込めてドランの手を押し返す。
ギータ
ギータ
いけー!
ベス
ベス
がんばれー!
審判の応援の矛先はドランだった。この3人は仲間なのかな。
僕には応援のチカラがないのか。……応援、ね。
何故か脳裏にプリンセス・リップルが思い浮かんだが、今は目の前の勝負に集中するべきだ。
腕力に関してはプリンセスの攻撃を片手で受け止め、さらにプリンセス・リップルを片手で吹き飛ばすほどだ。
だがそれでもドランの力を上回ることはできない。
両者共に膠着した状態が続いている。
そうだ、あれを使おう。
僕は空いているもう片方の手でインカムマイクを呼び出した。
カリスト
カリスト
目的のためなら手段など選ばないさわかっているだろう?
「力」勝負だろう?ならばこちらの「チカラ」を利用しても構わないということだろう?
ギータ
ギータ
ずるい!
ギータが憤慨している。だか、お前はどうだ、ドラン?お前はどう立ち向かう?
カリスト
カリスト
もっともっと見せてやろう圧倒的なチカラを
ドラン
ドラン
胸に手を当てれば譲れない誇りと抑えきれない覚悟湧いて
……リップル!?
ギータ
ギータ
え!?
ベス
ベス
ちょ!?
流石の審判たちも想定外だったようだ。
……しかし、声はドランなのだが歌い方がリップルのそれだ。
カリスト
カリスト
どうせならば楽しもうか僕のために歌ってくれ
ドラン
ドラン
いくよ!わたし頑張れって唱えたら前を向いて言葉に乗せた気持ちが溶けてしまわぬよう
双方歌って仕舞えば戦況は変わらない。
目の前の相手は誰なのだ?リップル……みなもなのか?体格はドランで多少のバフはあるだろうが僕とここまで張り合えるほどか?
……それを聞くのは野暮だろうか?少なくとも今は「ドラン」に合わせてやろう。
カリスト
カリスト
楽しませてくれないか予想以上の輝きで
ドラン
ドラン
強い強い決意なんだ自信持って貫いていくから
歌の応酬は止まりを知らない。両者共に譲らない。
ギータ
ギータ
これは……引き分けでいいんじゃ……
ベス
ベス
そ、そうだね……
審判は飽きたのだろうか?確かに、ここまできたら体力勝負だ。どちらが先に疲労の限界に達して手を離すか。
ベス
ベス
終わり!!
強制的に終了させられた。
ドランは相当頑張ったのか呼吸が乱れている。
……僕?僕はいつもと何も変わらない。
ギータ
ギータ
なんで余裕そうなんすか……
この勝負、僕の「勝ち」でいいかな?
ふとドランの方を見たら、こちらの興味を無くしたのか、ドラムスティックで編み物を始めていた。ベスとギータもその様子を見に行ってしまった。
僕が入る理由もない。少し離れたところでティータイムでもしよう。
カリスト
カリスト
……おや。
甘い匂いを嗅ぎつけたのだろうか、お茶菓子を準備していたら背後にベスがいた。
カリスト
カリスト
一緒にどうだ?
となると、香りから甘いピーチティーにしよう。
あいにく、本物の桃はなかったが茶菓子がちょうど桃を模したものを見つけたのでそれを追加した。
辺りの香りが全て桃になったがこれはこれでいいだろう。
ベス
ベス
わ……おいしい……!
素直な反応だ。普段のベスならば絶対に見せないであろう表情もしている。うん、かわいい♡
あの時から大好きな金平糖を口に入れる。星屑の形はなかなか攻撃的な見た目だが、いざ口の中に入れればその温度でたちまち溶けてしまう。舌にまとわりつく甘さを紅茶で一気に流し込む。
これぞ至高のひとときだ。
カリスト
カリスト
……明日には元に戻るのかい?
ベス
ベス
わ、分かっていたの……ですか?
カリスト
カリスト
もちろん。僕たちはずっと一緒にいたからね。少しの違いも見逃さないさ。
騙せていたという自覚があったのだろうか?目の前の「ベス」は少し悔しそうな表情をしている。
カリスト
カリスト
みんなが無事ならそれでいい。残りの時間も是非楽しんでくれ。
ベス
ベス
あ、ありがとうございます!
全く、かわいいやつめ。
翌朝
さて、本当に戻ったのだろうか?そろそろいい時間だ。起こしに行こう。
カリスト
カリスト
あ、おはよう、ドラン。
ドラン
ドラン
おう。
相変わらず筋トレをしていた。これは確実にいつものドランだ!
カリスト
カリスト
頑張れよ。
ドラン
ドラン
お前が応援なんて珍しいなぁ。ありがたく受け取るよ。
ギータの部屋に行った。気持ちよさそうに腹を出して寝ていた。……風邪をひいてしまうよ。
カリスト
カリスト
ギータ。
ギータ
ギータ
んーーーー
この寝相……紛れもない、ギータだ。
起こそうと揺さぶりをかけつつも慎重にお腹をしまってあげる。
ギータ
ギータ
かりすとぉ、おはよう。
カリスト
カリスト
おはよう、ギータ。
眠い目を擦りながらようやく起きてきた。
次はベスだ。
カリスト
カリスト
ベスー、そろそろ……
ベス
ベス
勝手に入るな、カリスト、貴様!
ああ、こちらもいつものベスだ。
カリスト
カリスト
また徹夜したのかい?体調も健康もそうだが、肌にも悪いらしいぞ?
ベス
ベス
朝から説教だと?
糖分が足りていないのか?僕は懐から小さいプレーンシュガードーナツを取り出した。
カリスト
カリスト
皆には内緒だぞ。
ベス
ベス
ふん。受け取ってやる。
そのドーナツは目を離した一瞬の隙に消えていた。


今思うとあの不思議な1日はもしかしたら夢だったのかもしれない。過去には戻れないからそれを確認する術もない。
そもそも憑依していたのは誰だったのだろうか?プリンセスたちにとても近いようで、でも違う。また会えるのだろうか?
──これ以上過去に浸っても仕方がない。
僕は次の獲物を探すべくアリスピアの様子を見るモニターをつけた。

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