第31話

霊体が現れたのは…温逐流
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2026/05/04 21:50 更新
抱山散人
抱山散人
何か言い残す事はあるか?
この言葉に姚宗主たちは戦慄する。
姚宗主
な、何を…とは………?
姚宗主が問う。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
お前たちは自分の正義を振りかざして俺や温一族を侮辱してきた。俺の事は兎も角、温情たちを侮辱したのはちょっと許せないな。
魏無羨が溜め息混じりに答え、抱山散人を見る。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
さて、こいつらどうしようか。ねえ、ばあちゃん?
抱山散人
抱山散人
そうだねえ…
抱山散人はニヤニヤと笑いながら魏無羨の横に立ち姚宗主らを見回す。
姚宗主
ひ…ひぃ……
抱山散人の謎の笑いと醸し出す雰囲気に宗主連中は恐れおののく。
抱山散人
抱山散人
こいつらは仙として生かす事は出来ない。…金丹を封じよう。
修士
な!ま、待ってくれ!!
修士
そ、そんな事…
修士
そんな事されたら私の今までの苦労が…!
等等等…………
 喧しい事この上無い。
神楽せりな
神楽せりな
(いよいよ、決着の時が来るね…!!)
抱山散人
抱山散人
お黙り!
抱山散人に一喝され、宗主連中はピタリと押し黙る。
抱山散人
抱山散人
今言っただろう?お前さんらは仙として生かす事は出来ないんだ。ならばその資格を剥奪するのは当然の処置だ。
宗主達
………
宗主連中は突き付けられた絶望に涙を流す。が、流石は姚宗主。いち早く気を取り直し、抱山散人に哀れっぽく懇願する。
修士
そんな事を仰らずに。我らにも事情があったのです。まずは我らの話を聞いて下さいよ。
修士
そ、そうですとも!我々にも事情が…
等等等等…………
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
何の事情だよ?
魏無羨は白けた表情で問いかける。
神楽せりな
神楽せりな
魏嬰…。
姚宗主は自分たちの命運を握るもう一人の人物、魏無羨に訴える。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
知るか、そんなもん
魏無羨は素っ気なく答える。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
お前ら、俺の訴えに一度でも耳を傾けた事があったか?俺はお前らに温情たちは何の力も罪も無い、ただの医者だと言い続けてきた筈だ。だがお前らは彼らを温狗と呼び続け、挙げ句に奸計を用いて俺と温氏を滅ぼそうとした。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
そんなお前らの事情なんざ俺の知った事じゃない。
魏無羨の言葉に何処ぞの宗主が食いつく。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
関係ねえよ。
魏無羨は面倒臭そうに答える。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
別に大世家だからどうこうという訳じゃない。寧ろ俺たちを追い詰めた主軸のこいつらには思う所はあるし、正直水に流した訳じゃない。
魏無羨の言葉に姚宗主らばかりでなく、三尊らも息を飲む。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
しかし、聶宗主と金光瑤、金夫人には一応自分の非を認め謝意と助力を頂いた。彼らに関しては様子見だな。
藍曦臣
藍曦臣
…藍宗主は?
何処ぞの宗主は名の上がらなかった藍曦臣の事を問う。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
藍宗主には謝意は頂いて無いからな。保留だ。
あっさりそう告げる魏無羨。
藍曦臣
藍曦臣
え?
神楽せりな
神楽せりな
(藍宗主が…?)
当の藍曦臣は目を瞬かせる。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
あんたは母君である劉殿に引き寄せられて来たたけだ。そこから成り行きで俺たちの所にいるだけ。あんたからは何も聞いてないぜ?
冷めた口調で事実を告げる魏無羨。
藍曦臣
藍曦臣
劉美月
劉美月
阿渙。
素っ気ない態度の魏無羨に呆然とする藍曦臣の肩を劉美月はポンと叩き
劉美月
劉美月
阿渙。きちんと言うべき事を言いましょう。
藍曦臣
藍曦臣
母上…
藍曦臣は縋るような目で母を見つめる。劉美月はそんな長男の頬を優しく撫で
劉美月
劉美月
大丈夫。阿嬰はきちんとケジメをつけろと言っているのよ。さあ、阿渙。
劉美月に促され、藍曦臣は魏無羨の前に立つ。
藍曦臣
藍曦臣
神楽様、王国の妹、魏公子。これまでの事、誠に申し訳無かった。姑蘇藍氏も今後神楽様、王国の妹、魏公子たちに害する事は無いと誓おう。
そう言って藍曦臣は頭を下げる。
姚宗主
…劉殿に免じてこの場では受け入れよう。しかし、姑蘇藍氏に関してはその言葉を真に受ける訳にはいかないな。
藍曦臣
藍曦臣
な、何故?
藍曦臣は思ってもみない言葉に狼狽える。
金光瑤
金光瑤
そりゃ。貴方の一存で事は何一つ進まないからですよ、曦臣兄様。
金光瑤が割って入る。
藍曦臣
藍曦臣
阿瑤…どういう事だい?
藍曦臣は訳が分からないといった表情で金光瑤を見つめる。
金光瑤
金光瑤
姑蘇藍氏の宗主は紛れもなく貴方です。しかし、最終決定権は貴方にありますか?
藍曦臣
藍曦臣
言われて初めてそこに思い至った藍曦臣。
金光瑤
金光瑤
貴方が何かを決めたくても一々そこに居られる藍先生や長老方にお伺いを立てる必要があるでしょう?現に藍先生は苦虫を噛み潰したようなお顔をなさっておいでだ。
金光瑤が笑いながら指摘する。言われて藍曦臣は藍啓仁の方に目を向けると、確かに藍啓仁は拒絶する顔をしていた。
金光瑤
金光瑤
お分かりですか?今貴方がそう約束しても、十中八九藍先生や長老方の猛反対を受け、反故にされるという事です。
藍曦臣
藍曦臣
藍曦臣は何も言えなかった。
金光瑤
金光瑤
まあ、それよりも…
金光瑤は姚宗主らを一瞥し
金光瑤
金光瑤
先にこの方々の事を済ませませんか?
そう言ってニッコリと笑う。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
けどさ、金丹を封じるって…どうやって?
魏無羨が抱山散人に尋ねる。
抱山散人
抱山散人
以前、お前たちに私は修真界の行く末を見届ける“見届け人”だと話したね?私は修真界が堕落したその時は、修真界の幕を下ろす役割を持つ、と。
修士
うん。
この時、仙門修士たちから騒めきが起こった。
抱山散人
抱山散人
“その時”が訪れた時にのみ使用を許された刑術が幾つかあるのさ。
神楽せりな
神楽せりな
刑術?
せりなが首を傾げる。
抱山散人
抱山散人
そうさ。金丹を有し仙術を扱う仙門修士は頑丈だからね。普通の方法ではなかなか死に至らない。そこで修士用に発案された刑術が存在するんだ。
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
へえ。
抱山散人
抱山散人
温情がやられた火刑もその一つだよ。
全員
え?
驚いた顔をするせりなとひかりたち。
抱山散人
抱山散人
無羨。普通、人間は火で焼いたって“灰”にはならんよ?
神楽姉妹
灰?
エクセレント隊&抱山ファミリー
あっ…
言われてみればその通りだ。
全員
へえ。
抱山散人
抱山散人
そして、その刑術の一つに金丹を封じるというものがあるんだ。何なら金丹を消すっていうのもあるよ?
神楽せりな
神楽せりな
え?それって…
抱山散人
抱山散人
ああ。化丹手の特殊能力の由来だ。温逐流はその刑術を扱う事が許された血族の末裔だろうね。…既に絶えて久しい能力だと思っていたが…これも時の悪戯かね?
淡々と語り続ける抱山散人と魏無羨の様子に、姚宗主の焦りは募る。
姚宗主
な、なあ、神楽せりな様、神楽ひかり様、抱山散人殿、魏無羨…殿。も、もしや…そ、それを我々に……
慌てて確認する姚宗主に
抱山散人
抱山散人
そうだよ。今からお前さんたちにやる事さ。
抱山散人の言葉に姚宗主らは半狂乱になり、必死の形相で命乞いならぬ金丹乞いをする。
姚宗主
俺がどれだけ苦労して、ここまで修為を上げたと思っているんだ!!
姚宗主
お、お願いします!何でも言う事を聞くから!
等等等………
 しかし、魏無羨と抱山散人は
魏無羨&抱山散人
あっ、そ。
とだけ返して知らんぷりだ。この態度に怒った宗主連中は
宗主達
…この!人でなしめが!!
宗主達
こんな事が許されると思うのか!!
等等等等………………騒ぎ始める。
 しかし
夷陵老祖・魏無羨
夷陵老祖・魏無羨
だから?俺は悪逆非道の夷陵老祖だ。今更そんな事言われたって、痛くも痒くも無いね。今の今までお前らが散々喚いていただろうが。
呆れ果てた表情で言い返される。
抱山散人
抱山散人
ああ、もう!五月蝿いったらないね!!
抱山散人が叫ぶと、突如シーンと静まり返った。
抱山散人
抱山散人
全く。せめてもの慈悲で“封じる”に留めようと思ったのに!
この言葉で自分たちが更に不味い事態に陥らせた事を悟った宗主連中。
宗主達
え?な、ま、まさ…か………
いよいよ宗主連中の顔色が蒼白になる。
抱山散人
抱山散人
お前さんたち。そんなに金丹が要らないのかい?
抱山散人の言葉に宗主連中は泣き叫び、許しを乞う。しかし
抱山散人
抱山散人
五月蝿い!
と一喝されただけだ。
抱山散人
抱山散人
温逐流、こちらへおいで。
神楽せりな
神楽せりな
温遂流!
温遂流
温遂流
温逐流は苦笑いを浮かべながら抱山散人の元へ行く。
抱山散人
抱山散人
お前に使命を与えるよ。こいつらの金丹を消せ。
抱山散人の命令に宗主連中は絶望に泣き叫ぶ。
温遂流
温遂流
しかし、私は…
心配いらないよ。確かにお前さんが生前行った所業は決して許される事ではない。けど、今は見届け人の私が命じた事だ。これによってお前さんが咎められる事は無いよ。
温遂流
温遂流
…そうですか。…しかし私は霊体なのですが…
抱山散人
抱山散人
私でも一時的に霊体が生者に触れられる様には出来るよ。…無羨の配下になった方が存在が安定するし、負担も少ないがね。が、そうすると無羨の許可が無い限り、配下から外れる事は出来ない。お前はどちらがいい?
温遂流
温遂流
温逐流はしばらく考え
温遂流
温遂流
抱山散人殿、お願い致します。
抱山散人
抱山散人
了解だ。こっちにおいで。
抱山散人は呼び寄せた温逐流の胸に手を添え力を注ぐ。すると、少しだけ輪郭がはっきりとし、力も漲ってくる。
温遂流
温遂流
おお。
温逐流は感嘆の声を上げる。
抱山散人
抱山散人
さあ、温逐流。使命を果たせ。
温逐流はコクンと頷き、宗主連中の元へ向かう。
宗主達
ひ!く、来るな……!
宗主達
や、止めてくれーーー!!
宗主達
た、頼む、止め…、ッギャーーーー!!
宗主達
ぅわああーー!!
温逐流が金丹を消す度に断末魔が響き渡る。


 宗主連中の金丹を消し終えた温逐流の姿は元のぼやけた霊体に戻った。
抱山散人
抱山散人
…想像以上に壮絶でしたね。
金光瑤は半ば呆然とした様子で呟く。
金光瑤
金光瑤
さて。
金光瑤は未だ呆然とする周囲にニッコリ笑い
金光瑤
金光瑤
そろそろ残った案件を片付けましょうかね?
と告げた。

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