ブワッ
ブチブチブチッ
結は、2人の間に入り、2人の手を握った
その時…アクロバティックさらさらの人間の頃の記憶が流れ込んでくる
借金取りが家に来る毎日
お金を稼ぐには夜の仕事で、知らない男と寝て、
夜中に家に帰る
だけど、娘は笑顔で迎えてくれる
その笑顔に何度救われた事だろう
娘とするバレエも楽しかった、
いつか私のバレエシューズを履いて踊って欲しかった
娘の誕生日が近付いてきた
娘の為に可愛い服やケーキを買って、お祝いするんだ
その為にお金を貯めてきた
「このお洋服、プレゼント!」
「ほんと!?ありがとうお母さん!」
「ケーキ、美味しい?」
「うん!美味しい!」
「お母さん、私凄く幸せだよ!!」
幸せだった
急に、借金取りの人が押し掛けてきた
今日は回収日じゃないのに
やめて、娘には手を出さないで
そんな思いも虚しく
私は体を押され、ガラスの扉に叩き付けられた
その衝撃でガラスは割れて、体に刺さった
娘の泣き声が聞こえる
ごめんね、こんな母親で
「やだ、!離して!」
「 “ママぁ''ぁ''!!!” 」
ダメ、連れて行かないで
追いかけなきゃ、
娘だけは、ダメ
その一心で家を飛び出て、車を追いかけた
あの少しの所で転んで、車は行ってしまった
外は土砂降だった
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こんなお母さんでごめんね
こんな所に産んでごめんね
こんなことになってごめんね
普通の家庭に産まれていたら、幸せだったよね
……何処行ったの
私の、可愛い子
私がお母さん?
…思い出せない
何か大切なものを無くした気がする
なにを、無くしたんだろう
春が起きた時
結は泣いていた
ギュッ
サラサラ
灰になって、消えてしまった
大丈夫、
娘さんも、きっと幸せだったよ
貴方を恨んだりなんてしてない
だから、次は間違えないでね
ちゃんと、幸せにしてあげてね












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!