上2つに7を揃えて、最後のダイヤルを回す。
その途中。
__カチャ。
外れた。
鎖も外れて、あたしは自由の身になる。
南京錠のダイヤルは774。
1人で少し喚くが、
そういえば今、この家には誰もいない。
最初に考えついたのは、家から出ること。
でも、あたしは彼が好きなんだ。
そもそも、ここを出たあたしは、
どこへ行けばいいのかすらわからない。
家族も友人も、自分の家すら覚えていない。
だから、出ていく気にはならなかった。
ふと目を向けたドアの前に向かう。
歩いても金属音が鳴らないことに、
若干の違和感を憶えながら。
その部屋は、入るなと言われていた部屋。
そもそも鎖で繋がれたあたしが入れなかった部屋。
彼が好きだから。
彼の事をもっと知りたくて。
その部屋のドアノブに手を掛けた。
__ガチャッ、キィ…
ゆっくりと、ドアを開く。
その部屋の中を見て、あたしは言葉を失う。
壁をすべて埋め尽くすように貼られた、
あたしの、大量の写真。
それは、ここに来てからはもちろん、
アカデミーに居る時の写真もあった。
学校最強大会の写真に、授業中の写真。
生徒会活動をしている時の写真も。
撮った覚えのあるものから、
盗撮と思われるものまで。
一体、何枚あるかも分からない程の写真の中で、
1枚の写真が、あたしの目に留まった。
にこやかに笑うあたしの隣に映る、
ポニーテールの女の子。
見切れていて、全部は見えないけれど。
それでも、すぐに分かった。
どうして、忘れていたんだろう。
あんなに仲良くしていたのに。
忘れていた記憶が流れ込んできて、
あたしは耐えられなくなって涙を流す。
とめどなく溢れる涙と、自分の声。
泣き声で掻き消えた声に、あたしは気付かない。
その怒った声も、近付いてきた足音にも。
背後から、ぽんっと肩を叩かれて、
身体がぞくりと凍りつく。
見上げると、にやりと笑う彼が居た。
まだ着けたままだった首輪を掴まれる。
怒った彼の声が耳を劈く。
そのまま、あたしの部屋に連れて行かれた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!