前の話
一覧へ
次の話

第1話

エピローグ
14
2026/02/23 01:21 更新
氷は、溶ける。




そんな当たり前のことを、俺はあの日まで知らなかった。



凍らせることしかできないと思っていた。
何も感じなければ、傷つかないと思っていた。


自分の弱さへの怒りも。

大切な人を誰一人守れなかった後悔も。

呪いへの憎しみも。



全部、凍らせてしまえば楽になると。



でも、ここに来てから、少しずつその考えが間違いだったんだってことに気付かされた。


誰かは笑って冗談を言う、

誰かは無愛想ながらも頼りになる、

誰かは文句を言いながらも仲間を想っている。

全く違う性格の3人。


だけど、この人たちの絆は誰にも切れない。

その中に、俺もいる。


あの人にここへ連れてこられて、最初は居心地が悪いと思った。


俺にとって、あの光の中は眩しすぎて、温かすぎて。


それでも。


誰も俺を追い出さなかった。


理屈を並べるやつがいて、

真正面からぶつかってくるやつがいて、

遠慮なく笑うやつがいる。



そして。


圧倒的に軽くて、


圧倒的に強くて、


決して目を逸らさない大人がいる。


あの人は、俺を測らなかった。


教えてくれた。


もしあの日、ここに来ていなければ、俺はたぶん、もっと冷たい場所にいただろう。


白い校舎と。
騒がしい訓練場と。
あの人の、適当な声。


『最強の呪術師』


俺を、呪詛師ではなく
呪術師にしようと導いてくれた人。



氷は、溶ける。

ここに、俺の居場所がある限り。
きっと、何度でも。

プリ小説オーディオドラマ