氷は、溶ける。
そんな当たり前のことを、俺はあの日まで知らなかった。
凍らせることしかできないと思っていた。
何も感じなければ、傷つかないと思っていた。
自分の弱さへの怒りも。
大切な人を誰一人守れなかった後悔も。
呪いへの憎しみも。
全部、凍らせてしまえば楽になると。
でも、ここに来てから、少しずつその考えが間違いだったんだってことに気付かされた。
誰かは笑って冗談を言う、
誰かは無愛想ながらも頼りになる、
誰かは文句を言いながらも仲間を想っている。
全く違う性格の3人。
だけど、この人たちの絆は誰にも切れない。
その中に、俺もいる。
あの人にここへ連れてこられて、最初は居心地が悪いと思った。
俺にとって、あの光の中は眩しすぎて、温かすぎて。
それでも。
誰も俺を追い出さなかった。
理屈を並べるやつがいて、
真正面からぶつかってくるやつがいて、
遠慮なく笑うやつがいる。
そして。
圧倒的に軽くて、
圧倒的に強くて、
決して目を逸らさない大人がいる。
あの人は、俺を測らなかった。
教えてくれた。
もしあの日、ここに来ていなければ、俺はたぶん、もっと冷たい場所にいただろう。
白い校舎と。
騒がしい訓練場と。
あの人の、適当な声。
『最強の呪術師』
俺を、呪詛師ではなく
呪術師にしようと導いてくれた人。
氷は、溶ける。
ここに、俺の居場所がある限り。
きっと、何度でも。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!