第10話

9.
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2025/07/05 08:51 更新

背中にかけられた低い声に、思わず振り返る。

.
 ⋯⋯え? 


見ると、濃い青色のスーツを着た男性が、
私に傘を差し出している。

いつの間にか、雨が降っていたみたいだ。


全く気が付かなかったのもそうだけど、それよりも。

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 ⋯⋯すみません、失礼ですが⋯。 






.
 お名前を、お聞きしても? 

彼に、似ている。

目元のあたりが、すごく。



.
 あっ、えっと⋯突然すみません。 
 不愉快でしたよね。
.
 名字だけでも⋯
 教えていただけませんか? 

跳ねる心臓を必死に落ち着かせて、
なんとか言葉を続ける。


目の前の男性は、黒い警察手帳を片手に言った。

諸伏 高明
 ⋯私は、長野県警の諸伏と申します。 
.
 っ⋯! 
.
 ⋯刑事さんでしたか。
 諸伏⋯珍しい名字ですね。 

ああ、間違いない。

きっとこの人が、彼のお兄さん。


この人に聞けば、答えてくれるだろうか。

「弟は死にました」と、言ってくれるだろうか。

彼のお墓に、連れて行ってくれるだろうか。

.
 ⋯ここへは、家族のお参りに? 
諸伏 高明
 ええ、まあ。 














.
 ⋯ご一緒しても、いいですか。 


いや、何言ってんだろ私。

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