第6話

5.
288
2025/05/25 12:14 更新

晴子
 ここです、あなたさん! 
.
 案外ふつうの喫茶店なのね。 


珍しく私と晴子ちゃんの休みが重なった土曜日、
私たちは例の「喫茶ポアロ」を訪れていた。


どんなにおしゃれなカフェかと思っていたけど、
私でも入りやすそうな雰囲気のところで少し安心。

.
 このビル、二階はどうなってるの? 
 毛利⋯探偵事務所?
晴子
 はい、眠りの小五郎っていう
 結構有名な探偵さんみたいです! 
.
 へぇ⋯ 
晴子
 実は⋯私も入店するの初めてなんです⋯ 
.
 えっ?
 そ、そうだったの? 

想定外の晴子ちゃんの言葉に驚く。

前話したとき行っていたのだとばかり思っていた。

晴子
 だ、だって〜! 
晴子
 イケメンは窓から少し見ただけで、
 お店に入る勇気なんてないですよ! 
.
 ⋯ふふ、そっかそっか。 
.
 なら仕方ないわね、
 早く中に入りましょう? 
晴子
 え、ええ〜っ!
 なんでそんな物怖じしないんですか! 
.
 晴子ちゃんこそ、こういうの
 グイグイ行きそうなのに意外ね。 

いや、やっぱりそういう恥じらいが、
私の持ち合わせていない乙女心というやつなのか。

私もそんなふうに振る舞えたらいいのにな。



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安室 透
 あ、いらっしゃいませ! 
.
 ⋯こんにちは。
 カウンター席ふたりで。 
晴子
 わ⋯やっぱりイケメン⋯!! 

なるほどこういうことか。


背もそこそこ高いし、何よりあの顔面で微笑まれたら
世の女性はみんな釘付けだろうな。



席をテーブルじゃなくカウンターにしたのは、
晴子ちゃんが思う存分イケメンを堪能したいだろう、

という計らいなんだけど、それでよかったかな。


.
 ⋯⋯ 
晴子
 ⋯⋯!! 

ちらりと晴子ちゃんの方を見ると、
晴子ちゃんは目を輝かせてこくこくと頷いてくれる。

これで良かったみたい。




江戸川 コナン
 あれ?
 この前のお姉さん! 
.
 え⋯?
 あ、君は⋯⋯ 


カウンター席に座っていたひとりの男の子が、
私を見て声を上げる。

この前、信号で会った男の子だった。

晴子
 あなたさん、知ってる子なんですか? 
.
 ええまあ⋯ちょっとね。 


それとなく周りを見渡してみるけれど、
この子の親らしい人は見当たらない。


こんなに小さい子がひとりでカフェに来るなんて、
前会ったときも思ったけれどやっぱり変わっている。

あのときも、この子は妙に大人びていて、
どこか見透かされているような気がした。


.
 そういえば、君のお名前は? 
 誰かと一緒じゃないの?
江戸川 コナン
 僕は江戸川コナン!
 ここにはひとりで来てるよ? 


もしかしたら町で迷子になったとか、
何か事情があるのかも。

そう思って聞いてみたけど、
その男の子⋯コナンくんは何でもないように答える。


本当に変な子だな⋯
申し訳ないけど、そう思ってしまう。

.
 ⋯そっか 


頭をなでると、コナンくんはにこっと笑った。

子供らしくないのに、
無理に子供らしさを演じている彼が不気味だった。

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