え。魔法を信じますかって?
僕は……今は信じています。え?はは、なぜでしょうね。なんとなくですよ。
ヒーローですか?いえ、見たこと無いですよ。はは、はっきり言うって?そうですね、それなりに。
突然どうしたんですか?へぇー、それは素敵だ。貴方はヒーローを見たんですか。え、何人も?良いですね。僕も見てみたいなあ。
ええ、貴方も良い終末ライフを。人生はあと少しですから。……あー、はいはい。さようなら。
夢見心地な頭だ。僕たちは、あちらには行けないだろうに。
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血相を変えた血潮の声が響き渡った。
ガーネットの瞳の下には黒い隈が張り付いており、いつになく危うげな美貌を放っていた。
ピシリ、と張り詰めた空気が一瞬にして崩壊した。「はぁ〜」…だの、「なーんだ」だの、ため息混じりの声が漏れ出す。
ボソボソ喋ってんなよ…と言わんばかりの顔をした颯太の足を、詩乃が高いヒールで踏みつけた。
が、その本人も怪訝そうな顔をしている。
なんのことですか、という言葉を飲み込んだ日花が元気に返事をした。100満点である。
しかし、顔には「何があったんだ」「詩乃さんって人の頭撫でるとかできたんだ」「人が肩にもたれかかるとか首跳ねそうなのに」という疑問やら感想やらが滲み出てていたが。
危機一髪、よかった〜…と、胸を撫で下ろす日花。詩乃の名誉のために言えば、彼女は別に暴君でも女王気質でもなく、ただ単に日花に慣れてもらって無いだけだ。余程の理由が無ければ首跳ねなどは断じてしない。せいぜい手刀程度だろう。
ビシッと指を差して血潮が言う。いつになく声が大きく、キレッキレである。理由は簡単、過度な疲労。
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場所は東京都心、渋谷。夜も明るく煌びやかな街を、和やかな雰囲気で歩く者達。因みに任務中である。
今回の任務は重要度がかなり高いので、全員での出動となる。
重要任務とは思えない気楽さだが、これでも警戒はしっかりしているのだ。彼らの眼は爛々と燃えている。
ふいに、ぽこんっ、という気の抜けた音が鳴った。
血潮のスマホである。
血潮が読みあげようとしたとき、通行人の絶叫が轟いた。
すかさず走り去る者を紬が呼び止める。
黄色い歯の男が粘ついた唾を飛ばして去っていった。大分酔っていたのだろう。酒臭かったが、情報の真偽を確かめている時間はない。
夜の東京を駆け抜ける一同。やがて、目的のファミリーレストランへ到着した。
辺りには黒い靄が充満し、一点へと集まっている。
そこには、黒髪の少年が捕らえられていた。
額には油汗が浮かび、苦しそうに喘ぐ声がこちらまで聞こえてくる。
その下でワインレッドの…少年だろうか。必死にもやへ手足を振り回して攻撃している。
黒いもやの敵—-。フードを被ったそれは、忌々しげに舌打ちをして逃走を図る。
空中に大きな亀裂が浮かび——
ニヒルな笑みを浮かべた零が上空から舞い降り、蹴りをかました。
もちろん邪魔をするためである。
敵は腕で頭をガード。腕に零の足がめり込んだのにも関わらず、凛とした姿勢で立っている。
額を合わせてごにょごにょと話し合っていた2人が愉しげに腕を構える。
二人の能力によって、空中に無数の氷塊、そして色とりどりの宝石が浮かぶ。
きょとん、とした後に愉しげに笑った零。氷塊を、宝石を足場にして敵へ弾丸の様に突き進む。使われない氷や宝石は勢いよく敵へ飛んでいく。キラキラと光が反射して零を照らす。
ワインレッドの瞳が揺れた。氷に、宝石に、零の片目翡翠の光に、そして零の輝きに魅せられて。
ぶわり。一気にもやが零を捕えようと動きだす。しかし、黒髪の少年は未だ捕えられたままだ。
日花が緊張した面持ちで前に躍り出る。
日花の声に合わせ、黄金の温かい光を放つ大剣が一斉に整列する。
12本のうち5本が黒いもやを切り刻み、うち5本は敵へとおそいかかり、もう2本は少年の救助へ向かう。
クリナも負けじと植物魔法を発動し、攻撃へと向かう氷塊と宝石に真っ赤な薔薇を咲かせた。
褒められたことで少し機嫌が上向いたのか、零の速度が上がる。
しかし、血潮はそれに眉を寄せた。
颯太が訳がわからない、という顔で血潮を見た。
血潮は戦闘から目を離さずに言う。
血潮がイヤホンへ囁いた。途端に、敵が唸りだす。
何故かキレた零が敵のフードを剥ぎ取った。途端に敵の顔が露わになる。
途端に場に響き渡ったのは今までとは似ても似つかぬ青年の声。それに。
そう、冷静そうな喋り方はどこへやら。砕けた口調になっている。
血潮の悲鳴の様な指示が飛んだ瞬間、零の居た所に大きな棘が出現した。
敵の標的が血潮に定まる。何かを握った——、と思った瞬間のことだった。
日花の喉がゴボ、と嫌な音を立てた。肺がやられた音。日花の口から赤黒い雫が漏れ出す。彼女の胸には長さ10cmほどの針が突き刺さっている。
血潮が息を切らしつつも『屍山血河』を発動。日花の止血を済ませ、震える手で銃のトリガーへと手を掛けた。
12発ほどを連射する。サイレントによって抑えられているとはいえ、爆竹ほどの大きさの銃声が夜の街へと響く。
青年が嘲るような笑みを浮かべて全てを針で迎撃した。ポト、と地面に堕ちる。
血潮が吐き捨てる様にいった。
呻き声を上げる青年の腹には赤黒い槍が突き刺さっている。
少し表情を曇らせる仲間達に向かって血潮が言った。
「じゃあ一斉攻撃だ」とは誰が言ったのだろうか。その言葉を合図に全員が血を蹴り、ある者は宙を舞い、ある者は敵へと直進した。それぞれの能力特有の光が辺りを照らす。
ヒーローに違いない。
ワインレッドの瞳と、黒髪の少年のアクアマリンの瞳が輝く。
アクアマリンが言った。ブルージーンの光の粒が敵の周りを旋回する。途端、敵の攻撃魔法が消え失せた。
青年の背後の空間に亀裂が浮かび、声が飛び込んで来た。青年がフードを取る前のような、無機質な声。喋り方こそ独特だが。
ワインレッドが吠えた。今度は大きな立方体が現れる。
赤にも紫にも、はたまた青にさえ見えるそれが、敵の青年の動きを遅くした。
心なしか喋り方も遅くなっている。思考力が弱まっているのだろうか。
軽快な会話の後、白く華奢な手が敵の青年へと伸びる。手に絡みつく蔦の刺青が妙に浮いており、それが酷く不気味に見えた。やがてその手が青年の髪を引っ掴み、裂け目へと引き摺り込んだ。瞬間、青年も亀裂も跡形もなく消え失せた。
ワインレッドの瞳の少年改め樹、黒髪の少年改め空目が仲間になった。
ふと、日花が首を傾げる。
何かいいことがわかった、という様に血潮の瞳が輝く。
そのとき、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
いや、ほんと、ごめんなさい…。続き書かなきゃーって言いながら二ヶ月経ってました…。
クオリティーもゴミだし……すみません…!!























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!