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第6話

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4,620
2019/05/18 22:58
. side hkt .







程よい強さの風が桜の木の合間を縫っていく。はらり、と 地面を薄桃に染めていく桜を眺めていた。空に広がる青と薄桃が何気に好きだったりする。

入学式を無事終え、新入生_基、1年生は教室へ戻る途中だった。予め、場所は教えられていたし、1度来ていたので迷うことは無い。



何気なく持って来ていた本の存在を今更ながら思い出して、大きくて綺麗な桜の木の根元に寄った。太い幹にもたれ掛かりページをめくる。



文字が連なった白い紙にこれまた薄桃が乗っかる。





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「あ……」



話は終盤に差し掛かった所で上から声が聞こえた。思わず声の方を見ると逆光になって顔はよく見えなかった。


でも、肌は白くて、太陽の光をキラリと反射していたのは分かった。


声は少し高めの男か、はたまた声の低い女か。



「っ、すみません」



読み取れない表情の相手に俺は謝って、隣をあけた。


相手はすんなりそこに腰かけて、ねえ、なんて声を掛けてくる。



「ねえ、何読んでるの」



こちらに向く顔は、次ははっきり見えた。
心做しか鼓動が早く感じられた。



綺麗な金髪で、片目は隠れている。
少しミステリアスな雰囲気を身にまとっている。けど、それとは別で、子供っぽい笑みを浮かべていたりする。肌が白くて、頬骨がはっきり分かる。

体は細くて華麗だ。


なんて言えば…………儚いような、そうでないような。






失礼か。




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