第陸話
私は、白澤様が嫌い。
そう...嫌いな...はず......
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──白澤の部屋──
白澤「ゔ〜っ.....」
『........また二日酔いですか...?いい加減学習したらどうです?💧』
白澤「お酒はやめられないんだよ〜...」
『アルコール中毒かよ......』
私は、この人の行動はどうかと思っている。
女遊びの癖、極度の女たらし、アル中、
この三つは、二日や三日ですぐに学習した。
こんな人を好きになるなんて、到底ムリだということを。
(やっぱり私、白澤様を恋愛対象として見れないわ。というか、見ること自体が難しい。)
この人を本気で好きになる人なんて、絶対にいないだろう。そう思った。
『とにかく、しじみ汁飲んだら仕事に就いてくださいよ。今日は休ませるなんてことしませんから。』
白澤「言い方がブラック企業なんだよな〜...一応僕が店主なんだけど...」
『私この頃、あなたが本当にここの店主なのかと疑ってきていますので。いっその事、ここの店主は桃太郎さんで良いんじゃないですか?』
白澤「地味にショック...」
『本心を言ったまでです。』
白澤「なんかあなたちゃん、今日は特に言動攻撃してくるね...」
確かに...言われてみれば...
そう思い、私は逃げることにした。
『.........このままだとド正論をかまして白澤様が死ぬかもしれないので、ここでお暇します。』
白澤「え、怖...」
部屋のドアノブに手をかけた途端、何故か固まってしまう。
言っても良いのだろうか...
『.......正直私、負けたかと思いました。』
白澤「えっ...?」
『...だって...白澤様が現世で私を助けてくれた時、一瞬...思っちゃったんですよ...かっこいいって...』
白澤「!!」
『でも、今のあなたを見てわかった。かっこいいと思った私がバカだったということが。私、まだ負けてませんから。』
そう言って私は、部屋を出た。
白澤「........。(...よく考えたら、あの子の...)」
本気で笑った顔、見たことないかも...
『.........』
..........
現世で助けてくれたお礼、言葉だけじゃ足りない気がする...
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桃太郎「白澤様、どうでした?」
『いつも通りでしたよ。』
桃太郎「ですよね...」
『全く...あの人本当にいろいろともったいなさすぎます。薬の知識が豊富で、女遊びの癖がなければ少しはマシになるというのに...行動で台無しになるんだから...』
桃太郎「........」
その時なぜか、桃太郎さんは目を見開いていた。
『...?なんですか?』
桃太郎「あなた様、この頃結構お喋りになりましたね...」
『...そうですか?私は生前の頃でもお喋りでしたけど。』
桃太郎「そうですか...」
桃太郎さんは、何が言いたいんだろ...?
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『では、おやすみなさい。』
桃太郎「はい。おやすみなさい。」
白澤「おやすみ...」
──あなたの部屋──
仕事が終わり、私は部屋着を着て寛いでいた。
『はぁ...(仕事をするのは楽しい。けど...白澤様が女性にナンパしてるところを止めるのが、めんどくさいんだよなぁ...)』
正直、このまま止めないで、あの人が女性にビンタされるところを見た方が良いのかもしれないと思った。
何せ、止めるのがめんどくさいんだから。
いっその事、放っておこう。
そう思った時、コンコンとドアがノックされた。
『...?どうぞ〜。』
ノックをしたのは.....誰だ?
コンタクトをしていなくて誰かわからない。
『.............』
白澤「...あなたちゃん?」
『え?あぁ、白澤様か...なんですか?』
白澤「その...ちょっと気になったことがあってね...(そっか、今コンタクトしてないのか...)」
『...?話が長くなりそうなので、とりあえず入ってください。』
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コンタクトではなくメガネをかけた私は、白澤様と向き合う。
『それで?気になったことってなんですか?』
白澤「いや、ここにいて楽しいかなって...」
『えっ?』
白澤「だって、仕事が終わった時はすぐにスンッてなるから...」
『あぁ...なるほど...(あれは、笑顔を作るのがしんどかったから...)』
目を逸らして、もう一度白澤様の表情を伺うと、
その人の目は、真剣だった。
『っ.....(これは...嘘なんてつけない.....っ)』
白澤「答えられない...?」
『........』
本当は、自分でもわからない。
楽しいのか、楽しくないのか
もちろん。この人のせいで。
でも......
『...楽しいですよ。』
白澤「!」
『お仕事をするのも、お二人のためにご飯を作るのも...毎日が楽しいですよ。』
毎日が楽しい。そう思ってる。
でも最近、白澤様といると、心が忙しい。
それは...どうしてだろう...
『......これで良いですか?頭の中のモヤモヤ、消えました?』
白澤「....うん。ありがとう。」
『はい。どういたしまして。ではまた明日、おやすみなさい。』
白澤「うん。おやすみ。」
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『..........』
心が...忙しい...