第8話

#08
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2026/08/17 11:26 更新
マナ
立ち位置の確認、ねぇ……
月曜日の放課後。
俺は重い扉を開けながら、手元のプリントを睨みつけていた。
先週サラが持ってきた予定表の正体は、舞台のサイズ感を測るための『立ち位置確認』だった。
大道具の搬入ルートや、照明がちゃんと主演に当たるかのテストらしい。
担任
「セリフの掛け合いはまだ先やから、とりあえず台本持って舞台の上に立って歩くだけでええぞ」
と、担任にも言われていた。
マナ
歩くだけなら、先週の練習のままでいけるな
少し安心しながら体育館に入ると、すでにステージの上では大道具担当の奴らがベニヤ板を運んでいた
あなた
あ、マナ! こっちこっち!
ステージの袖から手を振ってきたのはあなただった
今日も髪を耳にかけて、やる気十分という顔をしている。
マナ
お疲れあなた。なんか結構人おるな
あなた
うん、照明係の人とか、音響の人も集まっているみたい。あ、サラとライくんもいるよ
客席側のパイプ椅子を見ると、ちゃっかりライとサラが並んで座っていた。
ライにいたっては、持参したペットボトルの緑茶を掲げてこちらにニヤニヤと手を振っている。
マナ
……何であいつらおんねん
あなた
サラたちが
『大道具の手伝いがあるから』って
付いてきてくれたの。心強いよね
心強いというか、ただの野次馬やろ、あいつらは。
クラスメイト
よし、じゃあ主演二人、ステージの真ん中に立ってみてー!
舞台の下から、文化祭実行委員の女子がメガホン越しに声をかけてきた。
俺とあなたは顔を見合わせ、木製の階段を上ってステージの上へと向かう。
いざ舞台の真ん中に立つと、想像以上に客席が広く、そして遠く感じられた。
まだ誰も居ないはずのパイプ椅子が、妙な圧迫感を持って迫ってくる。
マナ
……広っ。こんなところで劇やるんか
あなた
うん、緊張するね
あなたが少しだけ俺の袖を引いた。その手が心なしか、いつもより小さく震えている気がした。
マナ
(あ、こいつもちゃんと緊張しとるんやな)
そう気づいた瞬間、俺の胸の中に、少しだけ『しっかりせな」という妙な責任感が芽生える。
クラスメイト
じゃあ照明のテストするから、二人はそのまま、帰り道を並んで歩くイメージで、上手から下手に移動して!
クラスメイト
あ、先週言ったとおり、最後の位置で『手を繋ぐポーズ』だけ確認させてねー!
メガホンの声が、体育館に容赦なく響き渡った。
マナ
(……え? ポーズも?)
俺が硬直した瞬間、体育館の照明がぱっと落とされた。
かわりに、ステージの真ん中を狙って、目もくらむような鋭いスポットライトが一筋、俺たちの真上に降りてくる。
あなた
マナ、行こう?
光の向こう側で、あなたがいつものように歩幅を合わせて一歩を踏み出す。
暗闇とまぶしい光の中で、俺たちの影が、舞台の床にギザギザと伸びていった。

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