第13話

 第九話
224
2026/06/29 17:05 更新









  勘右衛門が私を庇って怒鳴ったことで、

  その場の空気は一度静まり返った。





  だが、突き飛ばした張本人である留三郎が気まずそうにする中、

  やはりあの綺麗な上級生――立花仙蔵だけは、

  一切調子を崩さなかった。




  彼は冷徹な瞳のまま一歩前に出ると、静かに唇を開いた。



 仙蔵
  「 ……ただの小さな女の子、なら良かったんだがな。
   ――お前が噂の『天女』なら話は別だ      」



 勘右衛門
  「 天女……っ!? 」





  私の背後で、勘右衛門が息を呑んで体をビクつかせた。

  水色の忍び服を着た一年生たちも、

  恐怖に顔を青ざめさせてお互いに身を寄せ合っている。




 あなた
  ( 天女……?
   さっき学園長も口にしていたな、、、
   この世界では、何か不吉な意味を持つ言葉なの? )



  私が思考を巡らせていると、

  他の六年生たちも淡々とした口調で、

  包囲網を狭めるように話し始めた。





  「 天女は、忍術学園に大混乱をもたらすとされる存在だ。
    男たちを狂わせ、内部から崩壊させる       」



  「 そんな奴が、こんな妙な武器を持って、
    一年生の前に都合よく現れるか?  」



  「 お前が放ったあの爆音といい、
    その手枷といい、怪しすぎるんだよ 」



  文次郎や留三郎の言葉には、確かな敵意と警戒が混じっている。


  彼らにとって、私は「 学園を脅かす未知の侵入者 」なのだ。



 勘右衛門
  「 違います! 先輩方、あなたちゃんはただの――っ!? 」




  必死に私を弁護しようとする勘右衛門。

  だけど、これ以上彼に喋らせるのは得策じゃない。

  下手に庇えば、彼まで同罪に問われかねない。




  私は勘右衛門の腕からするりと抜け出すと、

  彼の前に立ち、小さな手のひらで彼の口をそっと塞いだ。





 あなた
  「 ――勘右衛門お兄ちゃん、もう大丈夫だよ。ありがとう 」



 勘右衛門
  「 ん、んん……? 」





  目を丸くする勘右衛門の手を優しく握り、

  私はゆっくりと六年生たちの方へ向き直った。





  もう、怯える子供のフリをする段階は終わった。


  公安の交渉人としての顔を、ほんの少しだけ表に出す。



  背筋を伸ばし、翡翠の眼で最上級生たちを真っ直ぐに見据えた。





 あなた
  「 ……確かに、私はこの世界の人間ではありません。
    皆さんの言う通り、違う世界から来ました   」



  私の毅然とした言葉に、仙蔵の眉がピクリと跳ねる。




 仙蔵
  「 ほう。やはり自白するか 」




 あなた
  「 ですが、皆さんが警戒している『天女』でもありません。
    学園を壊すつもりも、皆さんと戦うつもりも一切ない。
    私はただ、気づいたらあの森にいただけ       」




  本当の正体――元公安警察であることや、

  暗殺組織にいたこと、そして爆死して縮んだことなんて、

  口が裂けても言えないけれど。



 あなた
  「 信じるか信じないかは、あなたたち次第。
    でも、私を敵に回すより、味方にしておく方が賢明だと思うけど? 」




  不敵に微笑んでみせると、六年生たちの間に、


  天女への恐怖とはまた違う、新たな緊張の走る音が聞こえた気がした。



プリ小説オーディオドラマ