上杉から言われた言葉、全部が嬉しかった。
心にまっすぐ届いて、そのまま大事なところへと着いた。
そのまま長く思えるほど、ずっと上杉の体温を感じていた。
上杉の匂いは前と変わらないシトラスで、
がっちりとした細身の身体は、あたしを強く抱きしめた。
上杉の部屋で、大好きな匂いと、明るさで、
上杉の温もりを感じていた。
抱きしめて、見上げると唇が落ちてきて。
それを受け止めながらあたしは、ずっと笑っていた。
恥ずかしいことも、嬉しいことだけじゃない。
幸せなるまでにたくさんのことがあった。
若武くんへ矢を差したはずが、間違えたこと。
広瀬さんと館前とたくさん話したこと。
黒木と美門と駆け引きをしたこと。
小塚に気づかれたこと、
七鬼に気付かされたこと。
立花さんに嫉妬して、救われたこと。
藤沢さん、羽都さん、夜桜さん、暁さんと笑ったこと。
記憶を失ったこと。
上杉が大怪我をしたこと。
過去を乗り越えたこと。
答え合わせをしたこと。
気持ちが通じ合ったこと。
見つめあってキスをすること。
おはようとおやすみを言えること。
上杉が大好きで、
上杉はあたしを大好きなこと。
たくさんの経験が今のあたしを、あたしたちを作っている。
これからもキラキラな毎日が起こって幸せとは限らない。
泣いて、悲しくて、切なくなることもある。
けれど、そういう全部を乗り越えてきた今までがある。
たくさんの経験をさせてくれた恋のキューピッドと天使にも、
意外と感謝をしている。
これからも変わらないのは、
あたしは上杉を大好きで、ずっと隣にいること。
そう言ってあたしたちはもう一度キスをした。
月が綺麗に輝いてるのが、窓から見えた。
─── 完












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!