今まで生きた中で、神様というものに頼ったことなんて無かった。
大人たちの言う神様は、偶像でしかなくて、ぼんやりとしていて、存在していないようなものだと思っていた。
でも、里の言い伝えを聞いて、私は神様が存在していたことを知った。
聖綠の巫女には、大昔に里で生まれた女の人から受け継がれた加護が宿っている。
そう、今の私のような状態。
でも、私はこの髪があまり好きじゃなかった。
華が大人たちから強制された理由も髪のせい。
私が辛い思いをしたのも髪のせい。
そもそも、私の直感的に翡翠色は好かない。
何も良いことはなくて、頼ったことなんてなかった。
だけど、今この瞬間。
生きてきた中で、神様に一番強く願った。
幼少期、大人たちに言われるがままに手を合わせ形だけのお祈りをしたのとは違う。
本気だった。目的を持っていた。
大切な人を守るために。
たとえ、自分の身が犠牲になろうとも…
体から力が溢れるのを感じていた。
周りの動きが遅く見える。
私はその中で一直線に向かっていく。
驚くほど冷静に、落ち着いて。
最小限の疲労で収められるような体の動き方をして。
一刻でも早く辿り着けるように。
妓夫太郎も先程より遅くなっていて、こちらを見て目を見開いた。
正確に、最小限の動きで、驚くほど早く、雛鶴さんを掴んでいる妓夫太郎の腕をきり落とし、雛鶴の手を掴んだ。
そのまま雛鶴さんを傷つけないように引き、自身の後ろに隠す。
長い沈黙。時間が止まったようだ。
ふと、割れた鏡が目に入った。
そこに映る私…
あれ。これ、もともとあったっけ?
それがすうっと消えると共に、時が動き出した。
大きな疲労感と喪失感に襲われ、私はよろめいた。
くそっ…このタイミングで!?















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。