第19話

意外な名前
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2023/03/19 11:00 更新
西園寺雅
西園寺雅
え!? そんな……と、桐院先生が、亡くなっている……!?
鳳勇士
鳳勇士
神邉先生。それは、本当なんですか?
神邉純一
神邉純一
ああ、本当のことだ。こんなことで嘘をついたりできないさ。
……本当は、生徒に言うべきではないことなんだろうけど、
君たち二人ならいずれ調べてしまうだろうから
痛ましげに眉間にシワを寄せる神邉先生。

やはり到底、嘘をついているようには思えない。
西園寺雅
西園寺雅
半年前に、清華院学園をお辞めになっていたことはお聞きしましたが……
まさか、亡くなられていただなんて
――そんなの、『楽フロ』のシナリオにあったか?


いや……わからない。何しろ神邉純一ルートはクリアしていないのだ。

そもそもお助けキャラの桐院先生が、学園をやめていたことも覚えて・・・なかったわけだし……。
西園寺雅
西園寺雅
(ってダメダメ……! 
 ここは現実なんだから、ゲームのシナリオに囚われた思考回路してたら、
 間違いなく袋小路に入っちゃう)
西園寺雅
西園寺雅
亡くなられたことを『辞めた』ということにした、ということなのですか?
神邉純一
神邉純一
いや、退職時にはご存命だったし、退職もご本人の意思だったと思うよ
西園寺雅
西園寺雅
神邉先生は、桐院先生が何で亡くなったのかご存知ですか?
神邉純一
神邉純一
事故、だったはずだよ。歩道橋か、公園か……そのあたりはよくわからないが、
階段で足を踏み外して亡くなったんじゃなかったかな
西園寺雅
西園寺雅
そう……ですか……
妙に、気になる。

咲と親しくしていた人が死に、そして半年経って、今度は咲が亡くなった。
西園寺雅
西園寺雅
(――本当に、事故?)
警察がそう判断したのなら、その可能性が高いんだろう。

でも、階段から落ちたのではなく、何者かに突き落とされたのだとしたら?

……いや、考えても無駄か。既に解決された、半年も前の事件だ。調べるのは勇士でも難しいだろう。
西園寺雅
西園寺雅
(それに、半年前じゃさすがに時間があきすぎてる……)
連続で人が死んでいる、とまでは言えないだろう。

偶然と言えば偶然だ。けれど……。
鳳勇士
鳳勇士
……学園関係者、それも花園咲と親しい人間、
花園咲本人が半年のスパンで死んでいる。妙だ
西園寺雅
西園寺雅
そうよね……
単に、私が気にしすぎなのだろうか。

それとも――。
西園寺雅
西園寺雅
神邉先生は他に何かご存知のことはありませんか?
桐院先生のことに関して……何か……
神邉純一
神邉純一
そうだなあ……僕は、咲が彼女と親しくしていたことくらいしかわからないな。
……咲にとっては桐院先生が、学園生活の悩みや不安を吐き出せるような、
一番頼りにできる相手だったんだよ
西園寺雅
西園寺雅
一番? ……友達や、神邉先生ではなく?
意外に思って目を瞬かせると、神邉先生は苦笑してみせた。
神邉純一
神邉純一
まあ、その時は僕も彼女とそこまで距離が近い訳じゃなかったからね。
それに、僕は一応『良家』と呼ばれる一族の出身だし、
鳳勇士
鳳勇士
神邉家は華族の血を引いている家系ですからね
神邉純一
神邉純一
そうなんだ。……だから、一年生の時の咲が心を開いていたのは桐院先生だったんだよ。
桐院家も官僚や政治家を輩出する名家だが、桐院先生はご母堂が一般家庭出身で……
桐院家のご当主もいわゆる一般家庭の暮らしを知っている方だから
鳳勇士
鳳勇士
なるほど。ここの生徒は皆漏れなく良家の出身ですからね
神邉純一
神邉純一
ああ、でも、そういえば……
西園寺雅
西園寺雅
え?
何かを思い出したような顔になった神邉先生が、私を見た。

突然視線を向けられ、きょとんとしていると、

神邉先生はなんと、こう言った。
神邉純一
神邉純一
たしか……桐院先生は、西園寺楓君と、仲が良かったはずだぞ。個人的に親交があったはずだ。
彼女のことを聞きたいなら、兄君に話を聞いてみたらいいんじゃないか?
その言葉を受けて。

私と勇士は、どちらからともなく顔を見合わせた。













――そして、我が家での夕食を終え。


私は、食後のコーヒーを飲みながら参考書を読んでいる兄に近寄る。父は今日は会食で家にはおらず、母はすでに自分の部屋だ。

『初めての』兄とのまともな会話だ。

緊張でごくりと唾を飲み込んだタイミングで、私の気配に気がついたらしい。兄が顔を上げた。
西園寺颯
西園寺颯
……お前か。何か用か?
西園寺雅
西園寺雅
お兄様。少し、お聞きしたいことがあるのです
西園寺颯
西園寺颯
俺に? 何についてだ
西園寺雅
西園寺雅
桐院麻衣先生。
……彼女と、その死についてですわ

それを聞き。兄が、ゆっくりと目を見張る。

そして――静かな声で、わかった、と言った。

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