部屋でひとり、お茶を飲んでいると、扉をノックされた。
返事をすると、扉がゆっくりと開かれる。
ひょっこりと顔を出して、きゅるんっとした瞳で私の様子を伺った。
王子なんだから、威勢よく堂々と入ればいいものを……。
そっと入室する。
毒で死にかけたドギョムは、1ヶ月経ったらすっかり元気になっていた。私は部屋にこもりっぱなしだから、窓の外を眺めていると、ドギョムがよく庭で散歩している姿を見かけることが多い。
顔色も肉付きもよくなったな。これで大丈夫だろう。
そんなことを思っていると、ズカズカと歩いてきて、腕を広げ、私を抱きしめてきた。
そんなに感謝されても、私は感謝されるためにやったわけではないから、気分良くはならない。
苦しみ、助けを求めるようにテーブルクロスを掴んで、もがいている姿を見てしまったら……。それを見ているのに、何もしない人たちを見てしまったら……。
私の中の正義心が動き始めてしまったというだけだった。
助けないといけない、と謎に使命を感じたのだ。
ドギョムが離れると、真剣な顔をする。
どうしよう、すごく目が純粋だ。
全部自分のためなのに、勘違いしてる……。
そう言うと、ドギョムは離れて、部屋から出ていった。
紅茶、ちょっと冷めちゃったなあ。
それでも残すのは勿体ないので、そのまま飲み続けた。
紅茶も飲んで、暇になった。
適当に城の中を歩いていると、向こう側からジョンハンが歩いてきているのに気がついた。
軽く頭を下げる。
ジョンハンは歩く速度を早め、私の傍まで来た。
何用か、と見上げると、グイッと顔を近づけてきた。
反応速度が遅く、避けようとしたと同時に、私の頬に柔らかいものが押し当てられ、湿っぽい音を立てた。
私は顔をすぐに離した。
この前、私を見定めるような目で見てきてたあの男が、私の頬にいきなり口付けを………………!?しかもちょっとえっちな音立ててた……!!!
これは何か試されている……!?!?
もしかして、誰かに媚薬でも飲まされたのか……?
頬を優しく撫でてくる。
眼差しが、かなりかなり儚く、朧気だった。
何言ってんだこいつ……。絶対酔ってるだろ……。
謎解きみたいに言わないでくれ……。
どうして一日に2人も接近してくるんだ、まったく……。
クイッと袖を掴んで、引き留めてきた。
私よりもデカいくせに小動物みたいに袖掴みやがって……。
そう言うと、ジョンハンはニコリと笑った。
いやぁ、顔のいい人は笑顔も良いよなぁ。
この人の笑顔、フワフワで甘いから世の女は心臓を鷲掴みにされるだろうよ。
そういえば、そうだった……………………。
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!