第16話

一日に2人も
1,159
2024/01/22 11:50
部屋でひとり、お茶を飲んでいると、扉をノックされた。
あなた
はい。
返事をすると、扉がゆっくりと開かれる。
ドギョム
ドギョム
今いい?
ひょっこりと顔を出して、きゅるんっとした瞳で私の様子を伺った。
王子なんだから、威勢よく堂々と入ればいいものを……。
あなた
どうぞ。
そっと入室する。
毒で死にかけたドギョムは、1ヶ月経ったらすっかり元気になっていた。私は部屋にこもりっぱなしだから、窓の外を眺めていると、ドギョムがよく庭で散歩している姿を見かけることが多い。
顔色も肉付きもよくなったな。これで大丈夫だろう。



そんなことを思っていると、ズカズカと歩いてきて、腕を広げ、私を抱きしめてきた。
ドギョム
ドギョム
……助けてくれてありがとう。
あなた
私は何もしていません。
ドギョム
ドギョム
毒を吐き出させて、止まっていた息を吹き返させてくれたじゃん。あれをしてくれなかったら、今頃土の中だよ。
あなた
身に覚えがございません。
そんなに感謝されても、私は感謝されるためにやったわけではないから、気分良くはならない。
苦しみ、助けを求めるようにテーブルクロスを掴んで、もがいている姿を見てしまったら……。それを見ているのに、何もしない人たちを見てしまったら……。
私の中の正義心が動き始めてしまったというだけだった。




助けないといけない、と謎に使命を感じたのだ。
ドギョム
ドギョム
ヒョンの言ってたとおりだ。
なんでも白を切る。
あなた
なんのことやら。
ドギョム
ドギョム
…………いいよ。
ドギョムが離れると、真剣な顔をする。
ドギョム
ドギョム
あなたが白を切り続けても、俺は騙されない。あなたが心優しい姫で、謙虚で、俺たちが気にしないように嘘をついていること、全部知ってる。
どうしよう、すごく目が純粋だ。

全部自分のためなのに、勘違いしてる……。
ドギョム
ドギョム
この恩は絶対忘れない。
そう言うと、ドギョムは離れて、部屋から出ていった。



紅茶、ちょっと冷めちゃったなあ。




それでも残すのは勿体ないので、そのまま飲み続けた。














紅茶も飲んで、暇になった。
適当に城の中を歩いていると、向こう側からジョンハンが歩いてきているのに気がついた。
あなた
ごきげんよう。
軽く頭を下げる。
ジョンハンは歩く速度を早め、私の傍まで来た。
何用か、と見上げると、グイッと顔を近づけてきた。
あなた
……!?
反応速度が遅く、避けようとしたと同時に、私の頬に柔らかいものが押し当てられ、湿っぽい音を立てた。
私は顔をすぐに離した。
あなた
なっ、なにを……!!
この前、私を見定めるような目で見てきてたあの男が、私の頬にいきなり口付けを………………!?しかもちょっとえっちな音立ててた……!!!
これは何か試されている……!?!?
ジョンハン
ジョンハン
可愛くて。
もしかして、誰かに媚薬でも飲まされたのか……?





頬を優しく撫でてくる。


眼差しが、かなりかなり儚く、朧気だった。
あなた
……何か飲みましたね。
ジョンハン
ジョンハン
飲んでない。ただ……。
あなた
ただ?
ジョンハン
ジョンハン
おまえのことを四六時中、考えてしまう。
何言ってんだこいつ……。絶対酔ってるだろ……。
あなた
姫が一人だけだからでしょう。13人追加して、私を実家に帰してください。
ジョンハン
ジョンハン
姫が一人だけだからじゃないし、帰さないよ。
おまえの優しさに触れて、俺の警戒心も解けたんだよ。
あなた
そうですか……。単純な方ですね……。
ジョンハン
ジョンハン
単純だって?はは、俺は滅多に人を信じないの知ってるでしょ。
今回、ドギョミを助けてくれたのと、前ウジを助けてくれたのが、俺の警戒心を解く鍵になったんだよ。
謎解きみたいに言わないでくれ……。
あなた
警戒心解かれただけで私のことを考えてしまう理由にはならないですよ。
ジョンハン
ジョンハン
……おまえのことが好きみたい。
あなた
他の方のほうが相応しいので、私を狙うのはおやめください。
どうして一日に2人も接近してくるんだ、まったく……。
あなた
私はこれで失礼します……。
ジョンハン
ジョンハン
どこ行くの。
クイッと袖を掴んで、引き留めてきた。
私よりもデカいくせに小動物みたいに袖掴みやがって……。
あなた
城内の散策です。
ジョンハン
ジョンハン
暇ってこと?
あなた
暇っちゃ暇ですね。ずっと部屋にいるのもあれですし。
そう言うと、ジョンハンはニコリと笑った。



いやぁ、顔のいい人は笑顔も良いよなぁ。
この人の笑顔、フワフワで甘いから世の女は心臓を鷲掴みにされるだろうよ。
ジョンハン
ジョンハン
行こ。
あなた
どこへ?
ジョンハン
ジョンハン
秘密。
あなた
私に構う暇があるなら他の方と絡んだ方が……。
ジョンハン
ジョンハン
いいから来て。王子の命令は絶対だよ。
そういえば、そうだった……………………。




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