ふぁ〜
僕は、大きなあくびをした。
きしむ階段を一歩ずつ降りる。
🐻「おはよう〜」
母が用意してくれた朝ごはんを食べようと、籐のテーブルの前に腰掛けた。
🧓「グクちゃん、おかわりは?」
🐰「あっおかわりほしい!」
🧓「はーい、どうぞ。」
🐰「ありがとう〜!おばちゃん!」
母はお茶碗いっぱいに白ご飯を盛ると、その白ご飯を男に渡した。
ん?
ああっ!!昨日の彼だ…!!?
僕は昨日の出来事をもう一度思い返した。
🐰「ヒョーン!会いたかったですっ!」
ぎゅうううう…
🐻「えっ」
🐰「えっ?♪」
彼はキョトンとした顔をしている。
いきなり飛びかかってきて…会いたかっただのなんだの…わけがわからない!!
🐻「わぁああああーーーーーーー!」
僕は一目散に逃げた。
🐰「待って〜!ひょーーーーーん!!!♪」
あの変なやつ。
なぜうちに…
🐰「あっ、ひょん!おはようございます♪」
男は、うちの居間で白いご飯をがつがつとかき込んでいる。
🐻「お母さん、この人誰!?なんでうちにいんの?」
僕は、目の前で当たり前のように朝食を共にしている、この男の事をたずねた。
🧓「誰って、あんた。ジョングクくんでしょ。」
🧓「チョン・ジョングクくん!グクちゃんよ〜!忘れたの?」
…グク……ちゃん?
チョン・ジョングク…?
僕は、古い記憶を呼び起こした。
ぐすん、ぐすん
🐰「てひょんいひょん…ありあと。」
🐰「ううっ、ううっ」
…いた。
居たよ、居た!
暗くてチビで泣き虫で…それから
長い前髪のせいで目が見えなくて、いつも表情がわからなかったんだ。
でも、一度だけ見た事がある。
前髪の奥のきゅるきゅるの瞳。
🐰「てひょんいひょん…すき!」
きゅるーーーーーん・・・
思い出した。
チョン・ジョングク
あの、グクちゃんだ!
🐰「おばちゃん、おかわりー!」
🐰「あっテヒョンイヒョン、今日からよろしくお願いしまふっ!」
グクちゃんが口をもごもごさせながら、僕によろしくと言っている。
🧓「はいはい、ほら、どうぞ!」
母はそう言って、再びグクちゃんに山盛りのご飯を差し出した。
🧓「グクちゃん今日からしばらくの間、うちで過ごすから、あんたよろしく頼んだよ。」
母にもよろしく頼まれた…
いったいどういう…
しかし、
🐻「よく、食うな…」
僕は思わずつぶやいた。
グクちゃんは、さっきから一心不乱に食べ続けている。
昔からこんなに食べてたっけ…
そういえば、体も大きくなって…
身長は同じぐらいだと思うけど、筋肉ももりもりで僕よりもずっと良い身体だ…負けた。
大きな目も今はしっかりと見えている…
なんだか、意外と…いや、相当
かっこいいな…
🐰「ひょん!この後暇ですか?行きたいとこあるんでついて来てください!」
グクちゃんは目を輝かせてそう言った。
🐻「ぇ…あ、うん。」
🐰「ヒョンはそこに居てくださいね。それじゃあ、」
🐰「いっくよーーーーーー!!」
バッシャーーーーーーーン
グクちゃんは、崖の上から湖へ大きくジャンプした。
これで3度目だ。
水しぶきが僕の顔にかかった。
水の波紋がこちらまで来て、ほとんど泳げない僕を支えていた丸太がグラッと揺れる。
その拍子に、丸太がどこかへ行ってしまった。
🐻「うわっわっ」
溺れる!!!!
ぶくぶくぶく…
息が……できな…
🐰「ヒョン!ヒョンッ!しっかりして!」
グクちゃんは、暴れる僕の腕を掴んだ。
僕はグク…ちゃんに助けられてなんとか溺れずにすんだのだ。
やっと落ち着いた僕たちは、同じ丸太に掴まったまま、しばらくの間、ゆらゆらと浮かんでいた。
🐰「ちなみにここ、足つきますよヒョン。」
グクは、首をこてんと傾げてそう言った。
きゅるりと上目遣いをする大きな目。
そして僕は、恐る恐る水底へと足を伸ばした。
🐻「ほんとだ…」
🐰「もう〜僕さっきはびっくりしたんですよっ?あんなに浅いところで溺れちゃうんだもん!」
グクがパンツ一丁で、大きな石に片膝を立てて座り、水をたっぷり含んだTシャツを絞りながらそう言う。
グクは、本当に良い身体だ。
僕が、それに見とれていると、グクは更に話しかけてきた。
🐰「ヒョンも服絞ったら?びしょびしょでしょ?」
🐻「ぃ、いや……僕はいい…かな。」
そんな良い身体を見せつけられて、今更自分の身体なんて晒せるわけないだろぉ、、!
🐰「…ふぅーん?」
グクは、不思議そうな顔をしていた。
🐰「ひょーーーん!!こっちこっちーーー!」
僕よりうんと先を行くグクが、大きく手を振っている。
おまえは、元気でいいな…
濡れた服が重い…
僕は、すでに体力の限界だった。
僕は、へとへとになりながらもなんとかグクの待つ場所までたどり着いた。
この音は…!
🐻「滝!!?」
🐰「ヒョン!ヒョン!遅いよ!大丈夫?ケガしてない?もーヒョンはやっぱりダメだなぁ!」
まだ何も言っていないのにダメ認定をもらったようだ。
それにしてもグクは、僕の事をよく知っているらしい。
正直いって僕は、昔のグクの事をよく覚えてはいなかった。
そんな事を思いながら、辺りを見回していると、ふとそこには虹が見えた。滝のしぶきに日光が当たって現れたのだろう。
🐻「けっこう綺麗じゃん!いいとこだね。ここ。」
この島に、こんな場所があったんだな。
そう僕は思った。
🐰「気に入った?ヒョンに見せたかったんだ、ここ!」
グクは手を腹の前で組み、首を傾けて、へへへと笑って見せた。
へぇ、グクはそんなふうに思っていたのか。てっきり野生的な遊びに付き合わされただけなのかと思っていた僕は、ちょっぴり嬉しく思った。
🐰「ヒョン、聞いてください。」
グクは、急に神妙な面持ちで話し始める。
🐰「ヒョン…僕。」
🐰「あのね…僕は、ね。」
なんだろう。僕はドキドキしながらグクの言葉を待っていた。
🐰「トイレに行きたい!!」
🐻「してこいよ!!!」
僕は、間髪入れずにそう言い放った。
トイレから帰ってきたグクは、改めて真剣な顔をして話し始める。
🐰「ヒョン…聞いてください。」
🐻「なんだよ、大はさすがに…」
🐰「違いますぅ!!」
グクはすかさず言い放った。
🐰「ヒョン、僕…好きなんです。」
🐰「ヒョンの事が好きなんです!!!!」
僕は一瞬、グクが何を言っているのかわからなかった。
好き…というのは、つまり好きということで、つまりそれは好きということ!!!
🐻「僕の事が…好き…なの?」
🐰「…うん。」
グクは、顔を赤らめて腕を後ろに組んだままモジモジと落ち着かない様子でうつむいていた。
👨🏻「おまえ、あの滝まで行っとったんか。そんな体力よぉあったな。」
寡黙な父親が、珍しく口を開きそう言った。
🐻「うん、まあ。」
僕は、ぶっきらぼうに返事をした。
更に父はこう続けた。
👨🏻「で、グクちゃんはどうだった。」
🐻「えっ、!?」
僕は思わず驚いてしまった。
父に何かを見透かされている気がしたからだ。
🐻「グクは、凄く元気で良い子だよ…?」
👨🏻「ほぉ、良かったな。久しぶりの再会やったからどうやったんかなと思っとった。」
なんだよ。もう、そういう事ね。
グクから突然の告白を受けた僕はどうしたらいいのかわからなくて、しばらくの間困った顔をして黙っていたんだ。
するとグクは、
『まあ、今すぐに返事をくれとは言いませんよ!僕は絶対ヒョンのことを振り向かせますから!』
こう言った。
その後は…うん…
まあ、いろいろあって…
元来た道を引き返し無事にうちへ戻ってきたんだ。
🐻「はぁ〜、今日はいっぱい動いて疲れたな。」
母さんは、僕が上京した後も、僕の部屋をそのまま残してくれていた。
居場所があって助かる。
さっき母から聞いた話だと、どうやらグクの両親は今、ハワイに旅行中なんだとか。
それで、うちで預かってるわけだけど…
いやいやいや、預かるって何!
子供じゃないんだから!
グクは、僕の2個下だぞ!
まあ、いい。
今日はもう寝る。
家の中が静かだ。もう皆寝てしまったのだろう・・・
僕は、あっという間に眠りに落ちた。
がちゃ…
もぞもぞもぞもぞ…
🐰「ヒョン…もう寝ましたか…」
🐰「おじゃまします…」
🐰「っん…らいすき…」











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!