第2話

食虫植物┊︎hsrb
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2026/09/11 13:48 更新





ヒーローは、笑っていなければならない。
人を安心させるために。
恐怖を見せないために。
“完璧”であるために。
星導ショウは、それが上手かった。
誰より余裕があって、冷静で、優しくて。
どんな任務でも表情を崩さない。
だから誰も気づかなかった。
彼の内側に、腐りかけた感情が巣食っていることに。
あなた
  星導さん、お疲れさま  
休憩室の扉を開けると、あなたの下の名前カタカナがいた。
ソファに座り、資料をまとめている。
星導たちヒーロー四人のDyticaのマネージャー。
忙しいはずなのに、いつも誰より周囲を見ていた。
hsrb
  ……ありがとうございます  
星導は自然に笑う。
あなたの下の名前カタカナも笑い返す。
それだけ。
本当なら、それだけでよかった。
なのに。
__かわいい。
そう思った瞬間、胃の奥が熱くなる。
喉が渇く。
もっと近づきたい。
触れたい。
閉じ込めたい。
自分だけ見てほしい。
その感情は、恋というにはあまりにも醜かった。
最初は“守りたい”だった。
ヒーローとして当然の感情。
危険から遠ざけたい。
傷つけたくない。
けれど、気づけば違っていた。
あなたの下の名前カタカナが他の男と話しているだけで、頭の奥がじくじく痛む。
小柳に笑う顔。
伊波に向ける気遣い。
叢雲に差し出す缶ジュース。
全部、嫌だった。
自分だけを見てほしい。
自分だけに笑ってほしい。
その笑顔を、飲み込んでしまいたかった。
                              食べなくちゃ。
頭の中で声がする。
食べてしまえば、誰にも奪われない。
閉じ込めて。
壊して。
自分だけのものにしてしまえば。
でも、吐かなくちゃ。
こんなの愛じゃない。
ただの支配欲だ。
醜い。
気持ち悪い。
こんな自分を、あなたの下の名前カタカナが知ったらきっと怯える。
だから忘れなくちゃいけない。
吐き出さなくちゃ。
なのに。
あなた
  星導さん?  
名前を呼ばれるだけで、全部壊れる。




その日は任務帰りだった。
事務所には誰もいない。
他の三人はまだ現場に残っている。
二人きり。
それだけで、星導の呼吸は浅くなる。
あなた
  疲れてます?  
あなたの下の名前カタカナが覗き込む。
あなた
  顔色悪いよ?  
柔らかい声。

その瞬間。
ぷつり、と何かが切れた。
hsrb
  ……あなたの下の名前カタカナさん  
星導の声は、妙に静かだった。
あなた
  はい?  
hsrb
  貴方は、どうしてそんなに  
無防備なんですか
あなたの下の名前カタカナがきょとんとする。
星導は笑っていた。
いつもの穏やかな笑顔。
なのに目だけが、ひどく暗い。
hsrb
  他人に優しくして、
期待を持たせて…
hsrb
  貴方、危機感がなさすぎます  
あなた
  え……?  
あなたの下の名前カタカナが一歩下がる。
その一歩に、星導の胸がぐちゃりと潰れた。
あぁ。
逃げる。
逃げないで。
hsrb
  行かないで  
掠れた声だった。
縋るみたいに。
壊れた子供みたいに。
hsrb
  お願いですから…  
星導はあなたの下の名前カタカナの手首を掴む。
細い。
簡単に折れそうなくらい。
その脆さに、ぞくりとした。
食べたい。
閉じ込めたい。
誰にも見せたくない。
あなた
  星導さん、痛……  
hsrb
  ねぇ  
hsrb
  俺だけ見てくださいよ  
その声は甘かった。
花の蜜みたいに。
優しくて、逃げられない。
hsrb
  他の奴に笑わないでください  
あなたの下の名前カタカナの目に恐怖が浮かぶ。
それがわかるのに、止まれない。
hsrb
  お願いです  
星導はあなたの下の名前カタカナを抱き寄せる。
強く。
壊してしまいそうなくらい。
hsrb
  好きなんです  
hsrb
  好きで、好きでたまらないんですよ  
                           
食べなくちゃ。

頭の中で声が響く。







hsrb
  だから、
俺の中だけで生きてください


















その夜から。
あなたの下の名前カタカナは姿を消した。
ヒーロー事務所は大騒ぎになった。
誘拐。
失踪。
事件性あり。
誰もが犯人を探した。
けれど星導ショウだけは、いつも通りだった。
穏やかで。
優秀で。
優しくて。
完璧なヒーロー。
ただ一人きりの部屋でだけ。
星導はあなたの下の名前カタカナの頭を撫でながら、静かに笑う。
hsrb
  ……大丈夫ですよ  
暗い部屋。
鎖の音。
涙でぐしゃぐしゃになったあなたの下の名前カタカナは、もう声も出せない。
あなた
  ………ぁう……  
星導はその頬に触れる。
慈しむみたいに。
恋人にするみたいに。
hsrb
  もう誰にも取られませんから  
その目は幸福に満ちていた。
まるで。
ようやく欲しかったものを食べ終えた、
食虫植物みたいに。

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