第122話

文化祭
23,272
2019/03/22 06:55



囚われのメイド


硬いさびた鉄の檻の中で。


うずくまって泣いてるの。


メイドの叫びは誰にも届かない。


……ここから連れ出してよ。


私を自由にして。



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みく
……っ!
海人に握られている右手。

温かくて……温かすぎて。

声が出ないよ……。

あなたが私を引っ張ってくれる。

私の前を歩いてくれる。

暗闇の中で

ただ一筋輝く、光なの。





檻も鍵も柵も全て壊して。

私の手だけを握ってよ。

……どうしてメイドはご主人様に仕えていると思う?

辛いはずの仕事を、どうして投げ出さないと思う?

いつも命令ばかりのご主人様。

いつも助けてくれないけど。

メイドが本当に辛いとき……。

1番に救ってくれたのは、ご主人様だから。

メイドはご主人様に救われたの。

暗闇の中。

泣いていたメイドの前に現れたのは  

光を放ったご主人様だった。

冷たいメイドの手を握って。

檻も鍵も全て壊して。

二人・ ・で逃げた。

ねえ、ご主人様。

あなたは私に命令ばかりだけど。

……ずっとそばにいてくれてる。



みく
海人……っ!
海人
あっ……ごめん!
海人は私と繋がれている手を見て、初めて手を繋いでいたことに自覚したみたい。

パッと二人の手が離れる。

私の手がどんどん冷たくなっていく。

……しょうがないよ。

私は海人の彼女じゃないんだから。

海人
本当、ごめんな。
愛音のせいで。
みく
全然いいよっ!
愛音ちゃん、すごくいい子だったし
海人
愛音……よく俺の行事とか来るんだよ
みく
いいお姉ちゃんだね。
私のお兄ちゃんなんて、全然来ないよ。
海人
嫌、多分愛音は……
みく
ん??
どうかした?
海人
何でもない……
海人……何か言いかけてたけど。

あまり突っ込むのも、よくないかな。

みく
愛音ちゃん、置いてきたけどいいの?
海人
いいよ。
愛音のことだから、多分誰かと楽しんでるよ
確かに。

愛音ちゃんは、誰とでもすぐに仲良くなれそう。

みく
じゃあ、海人!
お化け屋敷行こうよ
海人
マジ!?
めっちゃ怖いらしいけど
みく
いいのいいの!
私と海人は並んで歩く。

学校は、いつもと違ってカラフルで。

いろんな匂いと、会話が混ざった空間。

文化祭って……楽しいな。

私は人生で初めて。

そう思うことができたんだ。





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海人……
行っちゃったけどいいの?
愛音
……海人はみくちゃんが好きなの?
そうだと思うよ。
みくちゃんと話しているときの海人の表情、見たことないもん。
愛音
……やっぱり選んでくれないんだ。
……しょうがないよ



海人が自分で選んだ道ならば。



私はその道を進む海人の後ろ姿を、見守ってる。



海人が最後まで、幸せでいられるように。

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