ず〜っと、こんな感じで。
私と海人は文化祭を楽しんでいた。
私にとって『文化祭』は。
目立たない暗い教室で。
膝をかかえうずくまって。
ただただ時間が過ぎるのを待っている。
そんな時間だった。
だから……。
大好きな愛しい人が。
私の隣にいてくれて。
一緒にはしゃいでくれる。
そんな時間になるとは、思ってなかった。
……こんなに幸せなんだね。
仲間が、友達が、大好きな人がいてくれる……。
幸せすぎて、怖いくらい。
本当は、すごく嬉しいんだけど。
私と海人は、メイド喫茶へ向かった。
ハルの金髪には、白と黒のリボンがいくつもついていて。
胸元のあいた、ヒラヒラのメイド服。
黒いニーハイをはいて。
ちょっと、メイクもしてる。
まあ、簡単に言うと……女装??
確かに、ハルはイケメンだって有名だから。
そんなハルがこんな格好してたら……。
みんな来るよね。
みんなで写真を撮って。
ハルをからかって。
みんなで笑い合った。
メイド喫茶も、みんなのおかげで大盛況みたいで。
廊下には列ができていた。
よかった〜。
私と海人はメイド喫茶を出て、廊下を歩く。
今はPM3:00
4:00まで自由行動で、それから片付けをする。
片付けが終わったら、後夜祭!
毎年、花火とキャンプファイヤーがあるの。
後夜祭で告白をして結ばれたカップルは、永遠に結ばれる、なんてジンクスもあって。
王道だけど、楽しそうだった。
私は後夜祭なんて、出たことないから。
今年は出られるのかな……。
耳元で、低い声がした。
一瞬で体が固まる。
体が冷える。
知ってるよ……何度も聞いてきた声だもん。
私はゆっくりと振り返る。
先輩は薄く笑った。
もうすぐ、文化祭が終わる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!