あなたを追いかけ続けて、15分程。
どこに行くのか不安になってきたとき、
彼女は不意に曲がって、駅に入っていった。
そして、あなたは階段を降りながら、
スマホを取り出す。
それと同時に軽く操作すると、耳に当てた。
人気が少ない駅だからか、彼女の声は
遠くても、はっきりと聞き取ることができた。
どうやら電話をしているようだ。
何が5日ぶりなのだろうか。
やけに楽しそうな口調に、胸騒ぎする。
もしかしたら。
もしかしたら、彼女は
これから、浮気相手に会うのかもしれない。
友達なんかじゃないかもしれない。
名前を呼んでしまえば、彼女を
止められたのだろうか。
手を取ってしまえば、彼女は
僕のところに戻ってきてくれただろうか。
そう思って、声をかけようとしたときだった。
不意に彼女が後ろを向いた。
遠い距離だったが、確かに目があった。
ハッと息をのむ。
……バレてしまっただろうか。
バレなかった。
いや正確には、彼女の瞳に僕は写っていない。
見つめ合っていたはずなのに、
キミの瞳に僕はいない。
それがつらくて、もどかしくて、切ない。
彼女の姿を探すために、
立ち止まっていた足を動かそうとする。
が、あなたは電車に入っていくところだった。
電車に乗れなかった。
無情にも、目の前でドアは閉まった。
彼女は行ってしまった。
___だけど、これで良かったのかもしれない。
まだ自分は、あなたの彼氏でいられる。
まだいつものようにそばにいてくれる。
まだこの現実から、目を逸らし続けられる。
これは、きっと夢だ。
Next.














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!