Motokiは知りません。
自分に向けられる異常なまでの愛が、かつて自分が無邪気に分け与えた「救い」の代償であることを。
耳元で妖しく輝くピアスの熱に浮かされながら、彼はなぜ二人が自分をこれほどまでに渇望するのか、その理由を問い続けていました。
その答えは、Motoki自身さえも忘れてしまった、十年前の遠い記憶の中に隠されています。
1. Wakaiの救済:絶望の戦場に咲いた花
十年前、まだ少年だったWakaiは、国境付近の紛争で孤立し、深い雪山で死を待っていました。
凍傷で感覚を失い、飢えと孤独に視覚が閉ざされようとしていたその時、偶然近くを通りかかった幼いMotokiが、彼を見つけたのです。
当時のMotokiはまだ能力を制御できず、その赤い瞳は周囲から「化け物」と忌み嫌われていました。
しかし、彼は死にゆくWakaiの手を握り、必死に祈りました。
その純粋な祈りは、無意識に具現化の魔法を暴走させました。
極寒の雪山に、ありえないはずの**「春の温もり」と「生命の炎」**が具現化し、Wakaiの凍りついた心臓を再び動かしたのです。
Wakaiにとって、Motokiは自分の命を繋ぎ止めた「神」そのものでした。
WakaiがMotokiを「花嫁」として檻に閉じ込めるのは、彼を愛しているからだけではありません。
彼がいなければ、自分の世界が再び凍りついてしまうという、底なしの恐怖があるからなのです。
2. ryoukaの救済:暗闇に差し込んだ光
一方、ryoukaはかつて、感情を去勢された「生ける屍」のような暗殺者でした。
彼はMotokiの実家である王家に雇われ、幼いMotokiを抹殺する任務を帯びて深夜の寝所に忍び込みました。
しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、暗闇の中で松明のように美しく輝くMotokiの赤い瞳でした。
Motokiは、自分を殺しに来たryoukaを怖がるどころか、その瞳でryoukaの魂に刻まれた深い孤独を見抜き、具現化の魔法で**「一輪の、枯れない青い花」**を作り出して手渡したのです。
その瞬間、ryoukaの中で何かが決壊しました。
人を殺すための道具だった彼は、その日からMotokiを守るための「影」へと生まれ変わりました。
離宮の静寂の中、WakaiがMotokiのピアスの魔石を愛おしそうになぞり、ryoukaがその背後から、かつて贈られた青い花の香りがするハーブティーを捧げます。
彼らにとってMotokiは、守るべき弱者であると同時に、自分たちの命を握っている**「絶対的な支配者」**なのです。
Motokiが自分たちなしでは生きられない体になっていくように、彼ら二人もまた、Motokiの存在なしでは、ただの空っぽな亡霊に戻ってしまう。
赤い瞳の少年は、自らが植えた「執着」という名の種が育てた、甘美な檻の中で、永遠に愛され続ける運命にありました。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!