第22話

# ダンタリオン・ダリ
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2024/04/25 12:27

一瞬、プルソン君の発言に悲しんだあと。
私に襲ってくるのは、怒りの感情だった。

セイティス・あなた
な、ん、なの。
セイティス・あなた
失望、だなんて、。
勝手に期待しといて、なにそれ。

だいたい、「そんな音」って、どんな音なの?
私の音は、私の音でしょ。
それなのに、どうして。
セイティス・あなた
なんで、そんなこと言うの、ッ、…

腹立つ。悔しい。
なのに、どうして、こんなに悲しくて、空っぽになったような感覚に陥るの?

才能が、ないから、?
才能なんてないから、こんなことになるの?

頭では分かっている。
そんなの関係ないと。

分かっているけれど。どうしようもなく、そう思ってしまう。

セイティス・あなた
フルートなんて、
辞めたいのに、…。

ここまで来たら、さっさと捨てたいのに。
こんな執着心、いらない。
フルートのこと、好きになることさえ出来ないのに。



ぼーっと、1人校舎裏、空を眺めていた。
なんにも、考えたくなかった。


ダンタリオン・ダリ
あれ、先客いた。
セイティス・あなた
………ダリ、先生?

けれど、そんな気持ちを踏み荒らされるように、ダリ先生の軽快な声が響いた。

ダンタリオン・ダリ
お隣失礼しまーす。
ダンタリオン・ダリ
で、なんだっけ。
君、プルソン君と喧嘩したんだっけ。
セイティス・あなた
どこ情報ですか、それ。


あんまり、私はこの人と喋ったことないのだけれど。
まるで慣れ親しんだ友人かのように喋りかけてくる。
こういうところが、人気の秘訣なのだろうけれど。
ていうか、本当に、この悪魔なんでも知ってるよな。
どこ情報なんだろう。

ダンタリオン・ダリ
いいじゃん、青春って感じ。
懐かしいなー。
ダンタリオン・ダリ
若いっていいね。笑
セイティス・あなた
おじさんみたいなこと言わないでください。笑
ダンタリオン・ダリ
ぐさっときた。

ダンタリオン・ダリ
で、なにが原因なの?
ダンタリオン・ダリ
理由もなく喧嘩するような悪魔じゃないでしょ、君たち。
セイティス・あなた
…まぁ、そうですね。

言ってもいい。言った方が楽になる。
けれど、プルソン君は、勝手に話されて嫌じゃないのかな、なんて考えてしまう。
ダンタリオン・ダリ
…ふは、思いの外優しいね、君。
ダンタリオン・ダリ
君の環境なら、
もっと卑屈でもおかしくないのに。
セイティス・あなた
…ど、どこまで知ってるんですか…。

私がそんなことを考えていると、それすら見透かしたような発言をされる。
ダンタリオン・ダリ
人のこと、考えなくてもいいよ。
自分のこと、第一にしなよ。
ダンタリオン・ダリ
多分、君って、相当なお人好しだよね。笑
セイティス・あなた
…否定は、できませんね。笑

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