第71話

65話
388
2025/05/10 12:33 更新
メインストリート


今日は一段と寒い。


あなたは、手と手を擦り合わせながら、少しでも温めようと息を吹きかける。


You
ふぅ〜
You
(あ、今日はお面してるから……息かからないのか)


1人でドジをしていると、後ろから足音が聞こえてきた。


アズール・アーシェングロット
おや?あなたさんではないですか
アズール・アーシェングロット
おはようございます
You
……あ、おはよう。アズール
アズール・アーシェングロット
手と耳が真っ赤ですよ。ずいぶん寒そうですね
アズール・アーシェングロット
マフラーや手袋をすればいいものを……
You
節約…。できるだけね
アズール・アーシェングロット
そうですか



___そう言うとアズールは、首に巻いていた上質なマフラーを解き、あなたにふわりと巻いた。


アズールの香りが鼻をかすめる。


You
…あ……
アズール・アーシェングロット
ふん。これで少しはマシになったでしょう
You
…いいの?アズール、寒くない?
アズール・アーシェングロット
カイロを持ってるので平気ですよ
アズール・アーシェングロット
あなたほど寒がりじゃない
You
……ありがとう、アズール
アズール・アーシェングロット
ふふ、もっと感謝してくれてもいいんですよ
You
うん、ありがとう
アズール・アーシェングロット
って、そんな律儀に返さなくても……


You
これ……あったかい、ふわふわ


マフラーに手も突っ込んで温める。


アズール・アーシェングロット
それは良かった。さあ、遅れないように教室へ向かいましょう
You
教室に着いたら返すね
アズール・アーシェングロット
……あぁ
アズール・アーシェングロット
いいえ、あなたに差し上げますよ

あなたは驚いて顔をパッと上げる。

You
……え?
アズール・アーシェングロット
だから……僕のマフラー、あなたにあげると言っているんです
You
いいの?
アズール・アーシェングロット
はい。困ってらっしゃるんでしょう?
アズール・アーシェングロット
僕の慈悲の心で、助けてあげますよ
You
お金……その、カツカツだったから…嬉しい
アズール・アーシェングロット
……喜んでいただけて、こちらも嬉しいです


控えめに笑う声を聞いて、アズールは微笑む。

アズール・アーシェングロット
(あなたさんが幸せになってくれるなら、対価も契約書もいらない)


フロイド・リーチ
お~いアズールぅ、早くしてよ〜。あ、イワナちゃんもいんじゃん!
ジェイド・リーチ
抜け駆けとは、感心しませんね

アズールより先に校舎に着いていたらしいジェイドとフロイドが、こちらに手を振って歩いて来る。

アズール・アーシェングロット
来なくていい!早く行きなさい
フロイド・リーチ
イワナちゃんいるのに先に行くわけないじゃん


いつもの笑顔を浮かばせて、双子がもう近くにやって来た。

ジェイド・リーチ
おはようございます、あなたさん
フロイド・リーチ
やっほ〜♪


一瞬であなたが高身長に囲まれる。

やはり、このオクタヴィネル寮生たちに囲われると、よそから見れば心配になる。

アズール・アーシェングロット
まったく……
ジェイド・リーチ
おや?あなたさん。そのマフラー……アズールのではないですか?
フロイド・リーチ
は?
フロイド・リーチ
マジじゃん。なんで?

フロイドの顔から笑顔が消え、目が開かれる。怖い。

同じ目線になるまで腰を屈めて目を合わせてきた。

アズール・アーシェングロット
寒そうにしてたので、“僕の”マフラーを差し上げたんです
フロイド・リーチ
へぇ……
ジェイド・リーチ
フロイド、あなたさんが怖がってますよ
ジェイド・リーチ
どうですか?暖かいですか?
You
……うん。アズールの……においがする

あなたが仮面を外した。

首に巻いているマフラーを引き上げ、口元を隠しながらそう言う。

フロイド・リーチ
は?
ジェイド・リーチ
おっと……
アズール・アーシェングロット
う゛ん゛ん゛ン
アズール・アーシェングロット
そそそそ、それは良かったです。
アズール・アーシェングロット
はは早く行きましょうか
You
うん
アズール・アーシェングロット
(落ち着けアズール・アーシェングロット。平常心だ…平常心)
ジェイド・リーチ
アズール、顔が真っ赤ですよ
フロイド・リーチ
ゆでダコ
アズール・アーシェングロット
静かにしなさい

ジェイドとフロイドが顔を合わせてニヤニヤしながら歩いていく。

今日は、いつもより寒くて暖かい朝だった。

プリ小説オーディオドラマ