不破 side 。
学生の頃は、男女ともに友達が多かった。
男とノリを合わせれば“ 面白い ”と認識されるし、女に優しくすれば“ カッコイイ ”と思われる。
だから人間関係に困ることは無かったし、いつも周りに友達が居た。
でも、“ 満たされたか ”と訊かれれば、……俺は
否定するだろう。
一緒に居て楽しい人も居るし、可愛い女の子だって居るけれど……どこか違和感がある。
どの人も、安心して側に入れる人では無かった。
そんなとき、出会った 。
隣のクラスの友達。
特別目立つような性格ではなかったが、落ち着いた声と性格に惹かれた。
一方的に寄ってこないこの距離感、笑うときの仕草とか、全部目で追って。
いつも一緒に居る奴らとは、比べ物にならないくらい大切な存在だった。
社会人になって。
どうして関係が崩れたのか、俺も分からない。
____ どうしたら良いかも、分からなかった。
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午前四時 。
気分はまさに最悪で、隣で爆睡しているあなたとは真逆…全く眠れなかった。
身体を起こさず、息を吐きながら手を額に置く。
ずっとろくな会話もしてこなかった恋人に泣かれて、質問された。
予想外のことで、その答えを出すこともできなかったけれど。
……正直、驚いた。
「俺のこと好きか」とか、俺だってお前に訊きたい。
俺が何で仕事以外の場で好きでもないやつとヤるんだ。どうして分かんないんだよ。
お前だって、俺に気持ち伝えてこないくせに。
声を漏らし、寝返りをうったあなたの顔を眺める。
昔からこいつは、すました顔ばっかり。
俺がホストやるとか、枕営業とか…分かっていても否定しなかった。
嫉妬くらいしてくれよとか、最初は思った。
文句とか、俺にどうして欲しいとか……言ってくれたら、考えるのに。
俺はお前のこと「好き」だけど、お前は俺に「好き」って言ったことある?
____…俺が伝えることができたら、きっと円満解決
なんだろうな。
できていたら、とっくに。
あなたの頭を撫でて、ベッドから立ち上がる。
顔を洗い、髪型を整え……毎日の“ 衣装 ”であるスーツを羽織り、荷物を手に取った。
ホストの仕事は不定期だ。
4時から5時の間に出勤のときもあれば、8時に出勤のときもある。
…休みを取らないと、あなたとゆっくり会話をする機会に恵まれないだろう。
内ポケットから自身の名刺を取り出し、眠っているあなたの枕元に置いた。
最近ヒステリックな姫が多いから、1日でも休めばもっと酷くなるだろう。
だから、……合法的に直ぐ会えるのは、これだけ。
仕事中の俺の方が、もっとあなたに優しくできる。
…………なんて、結局自分に優しいだけやけど。
そう呟き、俺は家を出た。
____ あなた side 。
目が腫れてる。
朝起きて一番に思ったのがそれで、「気分最悪…」とため息をついた。
まぁ、勝手に泣いた俺が悪いんだけど。
結局、湊は質問に答えてくれたのだろうか。
もはや寝る直前からの記憶がないわけだけど、これでもし「もう別れよう」とか言われてたらどうしよう。
……でも、突き放された気はしない。
ベッドから立ち上がろうと手を動かすと、何かに当たりカサッと音がする。
明らかにシーツではない感触に違和感を感じ、そちらに目を向けた。
…………名刺、?
その紙に並べられた、恋人の名前とその店名。
これは明らかに湊の名刺……だけど、いつもスーツに仕舞っているそれを落とすなんて、あるのかな。
不思議に思い、その名刺をじっと見つめる。
そういえば、湊の店に行ったことはないな。
稀に見るのは客の見送り風景で、中の態度とか接客とか……何も知らない。
俺はその名刺を、鞄の中に仕舞った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。