それぞれ違う場所で、違う毎日を過ごしていた。
朝早くから仕事へ向かう人。
夜遅くまで働く人。
人に囲まれている仕事の人もいれば、一人で黙々と作業する人もいる。
編集者、デザイナー、フラワーショップ店員、舞台俳優、ダンスインストラクター、作家、作曲家、画家、料理人、ミュージカル俳優、ラジオパーソナリティ、翻訳家・通訳、美容師。
彼らの仕事は、何ひとつ同じではなかった。
そして――彼ら自身も、お互いのことを何も知らなかった。
名前も知らない。
顔も知らない。
もちろん、一度も話したことがない。
そんな彼らが、ある一軒の家に集まることになる。
きっかけは、インターネットに掲載された一つのシェアハウス募集だった。
「大きな家で、一緒に暮らしませんか?」
それぞれが別々の理由でその募集に興味を持ち、それぞれのタイミングで入居を決めた。
誰かは、静かな一人暮らしに少し寂しさを感じていた。
誰かは、広いキッチンが欲しかった。
誰かは、新しい環境で創作をしてみたかった。
誰かは、ただ「楽しそう」という理由だった。
理由は違っても、向かう先は同じ。
それぞれの荷物をまとめ、見知らぬ場所へ向かう準備を始めた。
そして、入居日の朝。
まだ誰も知らない。
これから自分が暮らす家に、どんな人がいるのか。
どんな生活が待っているのか。
どんな騒がしい朝を迎え、どんなくだらないことで笑い、どんな夜を一緒に過ごすのか。
玄関の向こうにいるのは、ただの「知らない人」。
――このときは、まだ。
それがいつか、「おかえり」と「ただいま」を言い合う相手になるなんて、誰も想像していなかった。
これは、そんな彼らの物語。
「はじめまして」から始まる、ひとつ屋根の下の毎日。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。