空を見上げると暗い夜空に、星が瞬いていた。
ここに来て、初めての夜だ。
やはり、ここは暗いから夜空がとても綺麗に見える。空に見える星々は両手で掬えそうだとさえ思ってしまう。
空をボーっと見上げていたら突然阿部ちゃんに声をかけられて思わず後ずさる。
自分の行動がおかしなことくらい分かってる。疑われたってしょうがないことをしていることも。
だけどやっぱり、あれから阿部ちゃんのことを変に意識してしまってまともに話せない。
やけに距離を詰められて、妙な緊張感が走る。
もしかして裏切り者って阿部ちゃんのことなのではないか。そして、今ここで俺は殺されてしまうのではないか。
そんな考えが頭の中に浮かんでは消えていく。
予想だにしなかった、というとまた別だが、今ここで言われるとは思っていなかった言葉を聞いて心臓が跳ね上がる。
阿部ちゃんの眼差しは至って本気で、俺のことを真っ直ぐと見つめる。
それに応えなければと思って進捗に言葉を選びながら伝える。
まだ、俺は自分が阿部ちゃんのことを好きなのかよくわからない。けど、阿部ちゃんから告白されて嬉しかったことは事実で、阿部ちゃんと恋人になるということはとても心が惹かれる。
阿部ちゃんと付き合う。それがこの世界で何を表すのかなんて分かってる。
…けど…
この日、ここに一組のラバーズが誕生した。
ラバーズ…重複役職で、最後まで生存すると勝利陣営を乗っ取り勝利ができる。片方のラバーズが死ぬともう片方のラバーズも自害する。
あの後、阿部ちゃんはやる事があると言って俺とは別の方向に行った。
俺はそろそろ寝ようかなと思い宿舎に向かっている。
すると大声で俺のことを呼びながらこちらに駆けてくる康二がいた。
嬉しそうに飛び跳ねている康二だが俺らがラバーズになったことは誰にも言っていない。というよりバレてはいけないのに…。
キューピット…第3陣営。任意のプレイヤー2人をラバーズにすることができる。ラバーズが勝利すれば同時勝利。
その後殺される可能性をなるべく減らそうと、康二と2人で行動することになった。
と言ってももう夜だし2人で宿舎に向かい、そのまま寝ることにした。
俺がそういうとポケットからスマホを取り出して俺に渡してくれる康二。
きっと康二の距離感のことだしすぐに色々な人に感染させてくれるだろう。
俺はスマホを康二に返すと2人で並んで眠りについた。
朝、きっと海から流れてきたであろう、心地よい風をうけて、目を覚ます。既に何人かは起きているようでベッドが穴あきになっている。
俺は海でも見に行こうとベッドから起き上がり軽く支度を済ませて海辺に行く。
早朝に浜辺でバーベルを持ち上げている照は一度それを置くと俺を見て少し拗ねたようにこちらをみる。
照がそうやって俺に進めようとしてくるものだから俺は全力でお断りする。もう首がもげるかも、と思うほどだ。
俺はそうして照から離れると桟橋に向かった。桟橋では釣りができて、魚を手に入れることができる。なにもない無人島ではいい食糧調達手段だ。
ちょうどキッチンには光り輝くラウールがいて魚を焼いていた。
スター…クルー役職。スターという名の通り光り輝いているため誰から見てもスターだとわかる。
ふふん!と胸を張るラウール。するとちょうどそれに合わせるようにそばに置いてあったアラームが鳴った。
3匹あった魚のうちの1匹をラウールが俺に渡そうとした、その時だった。
緊急会議
死体が発見された