第8話

7.
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2024/07/25 11:00
ラウール
…甘え、かぁ。
阿部亮平
あぁ、そうだ。何故お前は生きるために、勝利するために足掻こうとしない。試合を放棄した。
阿部ちゃんが滅多に使わない荒い言葉に俺は思わず目を見開く。
ラウール
…俺ね、もう21。十分大人。1人でもなんだってやれる。けどね、まだ21なんだ。みんなには追いつけない。みんなに追いつく頃にはみんなはもっと遠くにいっちゃってる。
哀しい目をしながらラウールは話し出す。
ラウール
親みたいな存在だけど親じゃない。兄弟みたいな存在だけど兄弟じゃない。俺たちは家族ではない。…だけど、みんな大切なメンバー仲間だから。これ以上大事な人を自分の手で失いたくないんだ。
康二くん、めめ、岩本くん、ふっかさん、舘さん、しょっぴー…。そう言って今まで殺されたり、追放されたりしたメンバーを指折り数えていくラウール。
阿部亮平
じゃあなんで翔太には投票した?投票なんてしなければよかった。
ラウール
…そうだね。でもね、しょっぴーも俺みたいに仲間を失って悲しんでた。泣いてた。舘様のこと、殺したくなかったって。だからどうせパワープレイ盤面だし、どうせ吊られないだろうって、通報したんだ。でも、阿部ちゃんが翔太くんに投票するとは思ってなかった。どうしてなの?
ラウールはそうやって阿部ちゃんに質問を投げかける。
阿部亮平
…それは、この世界に俺と佐久間以外存在しなくていいからだよ。
その一言が深く、深く俺の心に突き刺さる。
阿部亮平
俺は佐久間のことを愛している。佐久間はきっと俺のことをキューピットによってつくられたただの仲間としか見てないだろうけど俺には佐久間へのたくさんの愛情がある。だから、俺と佐久間が愛を育むためにこの世界に俺ら以外の人なんて存在しなくていい。
初めて聞く阿部ちゃんからのその言葉が今の俺にとってはとても嬉しくて思わずはにかんでしまう。
ラウール
…じゃあ、俺のことも殺すんだね。
阿部亮平
あぁ、そうだよラウール。…じゃあメンバーによろしくな
その直後銃声が鳴り響いた。
ラウールの膝がガックリと折れて、頭から血を流すラウールがこちらを見て笑った。
ラウール
あぁ…ここにいたんだね、…。…あべちゃんと、…しあわせに、…
次第に顔から生気が薄れていき、しばらくしてラウールが死んでしまった事実を頭が受け入れ始めた。
阿部亮平
佐久間、出てきていいよ
佐久間大介
阿部ちゃんっ、!
けど今はそんなことはどうでもいい。
阿部亮平
ふふ、俺たちの勝利だ。
佐久間大介
生きてて良かった…。…阿部ちゃん大好き!
阿部亮平
俺もだよ。佐久間。
今は、今だけでもいいから7人の死体を踏み台にして、阿部ちゃんと結ばれていたい。
阿部ちゃんに抱きついて温もりを感じていたい。
佐久間大介
っ、…あれ、なんで、っ…あたま、いたい、
なのに、なんでお前は、ゲームマスターは俺の平穏を邪魔するんだよ。
阿部亮平
佐久間!?大丈夫?!これって…
佐久間大介¿
お二人とも、ラバーズ陣営の勝利、おめでとうございます。
この最悪なゲームが始まった時のように俺の体が勝手に動いてしまう。
佐久間大介¿
今からあなた方には選択肢を与えます。
阿部亮平
選択肢?
佐久間大介¿
えぇ。まず1つ目はこの島で死ぬまでずっと2人だけで過ごすか。もちろんこの島に助けなんて来るわけがないので正真正銘2人だけです。
佐久間大介¿
2つ目は今ここでお二人で心中していただくか。こちらも生憎立て込んでいましてね…。早めに島を開けてくださると助かるんですよ。あ、別に1つ目の選択肢を選んでいただいても構いません。
佐久間大介¿
3つ目は……ーーー
佐久間大介
ねぇ、阿部ちゃん。ほんとにこれで良かったの?
阿部亮平
うん、佐久間だって、後何十年あるかわからない未来をずっとここで過ごすのは嫌でしょ?
佐久間大介
…嫌じゃない!阿部ちゃんと一緒なら…なんでも耐えられるよ
俺たちは今島の最深部にある今まで知らなかった場所にいる。
2人で並んで椅子に座り、お互いに手を繋いだ。
阿部亮平
ねぇ、佐久間。奇跡って信じる?
佐久間大介
え?突然なに?
阿部ちゃんは俺の目を見て真面目な顔をしてそう問いかけてくる。
佐久間大介
んー…でも、奇跡ってあるんじゃない?ほら!実際こうやって阿部ちゃんと手を繋げてることだって奇跡だよ!ほら、80億分の1だよ?すごくない?
阿部亮平
んふ、世界人口知ってるんだ。
佐久間大介
佐久間さんだってそれくらい知ってますー!
阿部ちゃんとの関係も後少しで終わる。
でも、きっと。
佐久間大介
絶対、また告白してね?本当の愛情なら、告白してくれるでしょ?
阿部亮平
もちろん。ていうか俺佐久間の誕生日に告るつもりだったのにさー!
きっと。
佐久間大介¿
では、カウントダウン始めますね。
佐久間大介¿
10





























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9































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8


































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2

































佐久間大介
1
きっと、俺たちは運命で結ばれているから。

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