時計の針が12をまわり、俺は自分への誕生日を祝う言葉を投げかける。
いい感じにスマホも震えていてみんなからのお祝いメッセージを読むのが楽しみだ。
通知を確認しようとするとちょうど阿部ちゃんから電話がかかってきてびっくりする。
良識のある阿部ちゃんがこの時間に電話だなんて何かあったのではないかと不安になる。
俺はすぐさま電話に出ると焦る気持ちいっぱいで勢いよく阿部ちゃんに問いかけた。
俺の心配は見当違いだったようで電話越しでもわかる呆れ声で阿部ちゃんは話し出す。
にしても本当に阿部ちゃんがこの時間に電話とは珍しい。
俺はこうやって電話越しに声で祝ってもらえることがめちゃくちゃ嬉しいけど。
阿部ちゃんが話とはなんだろうか。今この電話越しで言えない、そして個人的な話…全く心当たりがない。
…でも、心の中にいる小さな俺が「行ったほうがいい」と言っている気がして俺は阿部ちゃんに同意の返事を返した。
朝、阿部ちゃんに言われた通りの時間に楽屋に着くと既に阿部ちゃんは来ていて、椅子に座ってスマホをいじっていた。
俺に気づくと阿部ちゃんはスマホをしまってちょうど向かいの位置にあるところをポンポンと叩く。
大人しく椅子に座ると少しかしこまった様子の阿部ちゃんに問いかける。
突然の告白に驚きを隠せないでいると阿部ちゃんが身を乗り出してそっと俺の手を包み込む。
阿部ちゃんの、その真剣な眼差しが俺のことをじっと見据える。
ギュッと阿部ちゃんの手を握り返して俺は口を開く。
自分の心臓がドクドクと脈打っているのがよくわかる。
その音が阿部ちゃんにも伝わってしまいそうで。
すると阿部ちゃんは立ち上がってこちらに回ってくるとその体ごと俺をふんわりと包み込んだ。
阿部ちゃんの優しい匂いが鼻をくすぐる。
頭を阿部ちゃんの胸板にぐりぐりと擦り付けて強く抱きしめ返す。
そう言いながらもポンポンと俺の頭を撫でてくれる阿部ちゃん。阿部ちゃんの温もりがとても心地よく感じる。
気づいたらかなりの時間が経っていたようで楽屋に翔太がやってきた。抱き合っている俺らを見て楽屋の入り口で固まっている。
後に続いて入ってきた康二も俺らを見てそんなことを言ってきた。
ニヤニヤしながら康二は阿部ちゃんとの会話をいろいろ話してくる。
康二越しに聞いてもかなりのドキドキだったのに阿部ちゃんから直接だなんて俺の心臓が持つ気がしない。
俺は逃げ出すべく相変わらず扉の前で固まってる翔太に叫ぶ。
ちょうどナイスタイミングで舘様が楽屋にやって来ていよいよ騒がしくなってきた。
康二がどんどんと勝手に俺と阿部ちゃんが付き合ったことを喋っていく。まぁ別に勝手にしていいんだけれども。
気づいたら照も来てて俺らは一切付き合った報告をしてないのに広まっていくから康二をどうにかして黙らせようかと考え始めた。
結局グループ全員に俺らが付き合って1時間もせずにバレてしまった。けれどこの空間がとても幸せに感じる。
みんなで笑っていられることがとても嬉しい。
あぁ、やっぱり9人で笑いあってこそがSnowManだ。
「裏切り者はダレ」ー完。