甘えたって嘘ついたってきっと許してしまうから、君は俺のために生きて欲しい。
7/4 23:59
俺はこの深夜にスマホ片手に時計の針を眺めていた。
後少しで俺の…そう、佐久間大介の誕生日なのだ。
Xへの自分の誕生日を祝うポストを準備して時計の針が12をまわるその時を待つ。
メンバーからの連絡は誰が1番早いかなぁ、なんて考えながらカチ、カチ、と動く秒針を見つめる。
後数十秒で31歳の俺とはお別れで、32歳の俺がやってくる。
ワクワクからなのか、単に深夜テンションなのかは分からないが、早く時計の針が12を超えて欲しくてたまらない。
あと10秒…
8
7
6
5
4
3
2
1
俺が「0」を数えて自分に誕生日を祝おうとした瞬間辺りが眩い光に包まれた。
…ま、…く…!!…さく、…
…誰だろう、誰か、俺の名前を呼んでいる…?
遂に頭がイカれたのかなんなのかは知らないが、寝ていた俺にまたがる形で翔太が俺の顔を覗き込んでいた。
とかなんとか言いながらも慌てて俺から離れる翔太。
…ふっふっふ、可愛いやつめ。
俺は体を起こして辺りを見回す。
俺の目に映るのは決して見慣れた自分の部屋なんかじゃなくて、何一つ見たことがないものがない場所だった。
翔太はそう言って呑気に笑っているが笑い事なわけがない。
確かに、それ考えたら俺の方がある意味呑気だ。というよりどうして俺はここまで寝ていたんだ?そして俺と翔太以外のみんなはどこにいるんだ?
そもそも俺は自分の部屋にいたはずだ。自分の誕生日を祝おうとして…。
翔太がいうその、ミーティングとやらに行くと阿部ちゃんがいた。
2人が何を言っているのかは俺にはよく分からなかったが多分みんなと会えるのだろう。俺は心を踊らせる。
阿部ちゃんは机の上な置いてあった法螺貝を手に取ると深く息を吸い込んで思いっきり吹いた。
緊急会議
死体は発見されていない
阿部ちゃんが法螺貝を吹くと同時に辺りが真っ暗になり、次に視界が開けた時には何故かみんなが周りにいた。
みんなが口々に俺への心配の言葉をかけてくれて胸が暖かくなる。
こんな見ず知らずのところだけどこうやってみんなと楽しく話せるのが本当に楽しい。
みんなで楽しく話していると唐突に頭に痛みが走った。頭を抑えてしゃがみ込む。
みんなが騒いでいるのが聞こえる。
次第に痛みも治ってきて、みんなに「大丈夫」と言いながら立ちあがろうとした。
けど、何故か自分の意思で体が動かない。まるで誰かに操られているように俺は起き上がる。
俺の意思とは全く関係ない言葉が俺の口から紡ぎ出される。
インポスター?裏切り者?そんな人がいるわけがない。この9人の誰かが俺らを裏切るわけがない。
いやいやいや、ゲーマスさん?俺そんなこと許可した覚えないですよ?
そのゲームマスターとやらがそう告げるとふっと体が軽くなって思わずその場に倒れ込む。
まだ頭は少しクラクラするがなんとかだ。
舘様がそんなことを言っているが、俺は分かってしまった。決して俺はインポスターなんかじゃないが、みんなの敵であることに変わりはないだろう。
第3陣営
自分のことだけ考えろ。他人のことは利用せよ。
あなたのロールは
ブラックハットハッカー
ここから、俺たちの命をかけた騙し合いは始まった。