第24話

9.
59
2025/09/26 11:00 更新
学年が変わって教室が変わっても、獣の目は僕から移らなかった


適切な反応をし過ぎたのかも知れない


僕は、ずっとその”適切”に沿って生きて来たのだから









H..
もうすぐ七夕だね
そう言えば、と何かするのか聞いてみる


何も、と返って来た


僕だってそうだ
S..
いむくんは?短冊とか書く?
H..
飾るとこ無いでしょw
H..
まぁでも...書いてみても良いかも!
君を置いて色紙いろがみを探しにいく


きっとこれが最後の七夕になるから


君に残す思い出としても、短冊を書くのは楽しいかも知れない
H..
あ、お母さん
H..
色紙ある?短冊書きたくって
お母さんは少し考え、「無い」と答えた


まぁ常に置いてある様な物じゃないか


無いなら無いで、書かなくても良いだろう
.
買って来るよ。ちょっと待ってて
H..
え...あ、じゃあお願い
お母さんが荷物も持つのを横目に見ながら、僕は自分の部屋に戻る


「買って来てくれる」と言うと初兎ちゃんは驚いた顔をした
S..
え、そんなに書きたかったん?
S..
それなら僕らで買いに行こうや
H..
良いの良いの
H..
そんな遠くないし...
H..
それに、僕が我儘言った方が喜ぶから
今の家族は、僕が何を言っても叶えてくれるのだろう


余命少ない1人息子の人生を、安全に充実させようとしている


一応、僕だってありがたい事だとは思っていた
S..
...そんなもんなん?
H..
そんなもんなの!僕のとこはね









S..
何て書くー?
短冊を睨む様にしながら君が言う


僕も少し迷ったけれど、もう書く事は決めていた
H..
せっかく初兎ちゃんと一緒に居るんだし
S..
...これにしよっかな
書き終わった短冊を少し眺める


"初兎ちゃんが僕を忘れませんように"なんて書くのは可笑しいし


僕が選んだ言葉は、少しだけ意味を変えた物だった
H..
早くー!
S..
もうちょっとやから





H..
.....せーの!
H..
"初兎ちゃんとずっと一緒にいれます様に"
S..
"いむくんとずっと一緒にいれます様に"
驚いて顔を見合わせ、2人で笑った


まさか同じ願い事を書いていたなんて


これは2人して取り繕った結果なのだろうか


2人で1つ、スマホについたキーホルダーを思い出す
S..
なんか叶いそうやな!w
H..
だねw
H..
絶対覚えてて!
S..
これを?
H..
うん、これも!









短冊を書いて数日、僕は学校を休んでいた


君に会えないのは寂しいけど


でも、もう本能は狂い切っているから
H..
とは言っても、やる事は殆ど無いかな
H..
別に見られて困る物も無いし...
スマホを眺めてボーッと過ごす


動かすたび、鈴の音が部屋に響いていた




H..
なんか天気悪いなぁ
H..
晴れの日が良いんだけど...
君からの通知がまた1つ増える


とっくにやる事は無くなっているけど、今君と会う訳にはいかなかった


全てが揺らいでしまいそうだから


どうせ変わらないのだから、僕が選ぶ結末が良い




H..
...!晴れてる
H..
うん、まぁ...ちょうど良いくらいかもね
スマホだけ持って家を出る


今日は家族への連絡も入れなかった


君以外全部どうでもいい
H..
海が良いかな〜
H..
踏み切りも近いもんね



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