学年が変わって教室が変わっても、獣の目は僕から移らなかった
適切な反応をし過ぎたのかも知れない
僕は、ずっとその”適切”に沿って生きて来たのだから
そう言えば、と何かするのか聞いてみる
何も、と返って来た
僕だってそうだ
君を置いて色紙を探しにいく
きっとこれが最後の七夕になるから
君に残す思い出としても、短冊を書くのは楽しいかも知れない
お母さんは少し考え、「無い」と答えた
まぁ常に置いてある様な物じゃないか
無いなら無いで、書かなくても良いだろう
お母さんが荷物も持つのを横目に見ながら、僕は自分の部屋に戻る
「買って来てくれる」と言うと初兎ちゃんは驚いた顔をした
今の家族は、僕が何を言っても叶えてくれるのだろう
余命少ない1人息子の人生を、安全に充実させようとしている
一応、僕だってありがたい事だとは思っていた
短冊を睨む様にしながら君が言う
僕も少し迷ったけれど、もう書く事は決めていた
書き終わった短冊を少し眺める
"初兎ちゃんが僕を忘れませんように"なんて書くのは可笑しいし
僕が選んだ言葉は、少しだけ意味を変えた物だった
驚いて顔を見合わせ、2人で笑った
まさか同じ願い事を書いていたなんて
これは2人して取り繕った結果なのだろうか
2人で1つ、スマホについたキーホルダーを思い出す
短冊を書いて数日、僕は学校を休んでいた
君に会えないのは寂しいけど
でも、もう本能は狂い切っているから
スマホを眺めてボーッと過ごす
動かすたび、鈴の音が部屋に響いていた
君からの通知がまた1つ増える
とっくにやる事は無くなっているけど、今君と会う訳にはいかなかった
全てが揺らいでしまいそうだから
どうせ変わらないのだから、僕が選ぶ結末が良い
スマホだけ持って家を出る
今日は家族への連絡も入れなかった
君以外全部どうでもいい
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。