第23話

8.
55
2025/09/25 11:00 更新
S..
そろそろ夏も終わるな
H..
そうだね〜
静かに揺れる波、食べ終わったアイス


君が言った様に夏の終わりを感じる


このまま過ぎていく日々を少し惜しいと思って、僕はそれを追いかけたくなった




H..
あーぁ、何でだろ!
海が優しく手招きをする


やっぱり僕はそれも悪く無いと思った


本能が少し、狂い始めた気がしたんだ




少しすると、海を踏み締める音が聞こえて来た


君もアイスを食べ終わったのだろう




S..
なぁいむくん、やっぱ喧嘩ちゃうやろ
またこの話か、と水平線を眺める


何度聞かれたって変わらないのに、君はまだ気づかないらしい


それとも諦めが悪いのか


どちらにしろ僕は、君と過ごす時間の全てを楽しむだけだった
H..
何で...そんな気になる?
H..
別に喧嘩してそのまま〜くらいあるでしょ
H..
どうでも良くない?関係無いんだし
H..
それとも...初兎ちゃん、僕の事嫌いになったの?
S..
ッ...そんな訳、!
突き放す様に、それでいて離れるなと言う様に


"友達"らしい距離感を保つみたいに


焦った声が聞こえてきて、今の君の表情を見たかったと思った
S..
...僕はわからんけど...そんなに変なんかな
S..
大切な友達なんやから気になるやろ
少し呼吸を整えた君は、落ち着いた声でそう言った


今までと同じ様で、今までよりも適切な発言だ
H..
大切な友達...ねぇ
S..
うん...だから、相談くらいして
S..
いむくんが元気してないと嫌や
わかりやすい嘘に君の焦りが滲んで見える


もうすぐ夏が終わるからだろうか


僕が傷ついて苦しんで、自分を求める事を望んでいる癖に
H..
急にどうしたの?
予想外の行動に驚き振り返る


いつの間にか近づいていたらしい君は、優しく僕の右手を取っていた
H..
...!
君の唇が、僕の手にそっと触れた


海の青さがお伽話みたいで、僕はどうしていいかわからない


顔を上げた君の瞳は、優しく僕を捉えていた
S..
友達なんだから、頼ってや
H..
…友達にする事とは思えないんだけど
君は何も言わず、ただ悪戯に微笑んだ


どうして良いかわからなくなった僕は、君と同じ様に笑う事にした


上手く取り繕えていれば良いけれど


だって君は、僕が一目惚れした相手なのだから









君と過ごす日々は楽しくて、波の様に冬は過ぎ去っていた


嘘吐きなエイプリルフールを君と過ごす


僕も君も、今更新しい嘘を吐く必要なんて無かった
H..
明日から高2だね
S..
せやな。いつの間にか
H..
あーぁ。嫌だな〜
季節が変われば、それだけ終わりに近づく


昔は何とも思わなかったのに


君に気づいてしまったから、僕は怖いと思ってしまったんだ


僕の居なくなった世界で、君は僕を忘れてしまうのでは無いだろうか
H..
初兎ちゃんは大人になりたい?
S..
...どうやろ
S..
なりたい様な気はするけど...受験は億劫やしな
H..
確かに...w
未来が無い僕には関係無いけれど


心の中で思っているうちに、「いむくんは?」と聞き返された
H..
初兎ちゃんと一緒に...大人になりたかったかもな
深く考える前に、言葉が口をついて出ていた


君は訳がわからない、と言った顔をする


僕の病気の事は家族しか知らない


そしてこれからも、言うつもりは無いのに
S..
なればええやん。一緒に大人に
S..
大学行ってお別れ、とかする必要も無いやろ
何も知らない君の言葉に笑みが溢れた


このまま行けば僕は、きっと高校を卒業した頃には入院で寝たきりだ


君から少しずつ離れていって


きっと、僕は忘れられてしまうのだろう
S..
何で笑ってるん?変なの
H..
わ、変って言った!酷い!
僕が怖いのは、君に忘れられる事だけだった


少しずつ本能が狂っていく


この体が動くうちに、でも今はまだこのままで
H..
...初兎ちゃん、これからもよろしくね
S..
やっぱ変...どうしたん?
H..
別にー?



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