星導先輩と出会ってから数日。
あれから何事もなく、平和に時間が過ぎていった。
いつも通りナリ様と廊下を歩く。
しかし、後ろから聞こえてきた会話にふと足を止めた。
彼女は不思議そうな顔をしながらも歩き出し、やがて見えなくなった。
私は、壁越しに僅かに聞こえた会話に耳を澄ませた。
「絵画」
聞こえてきたその単語に、私はさらに神経を研ぎ澄ました。
おそらく、この声の主は監督生である月ノ先輩だろう。
剣持先輩と呼ばれた人も、確か監督生だったはずだ。
どうやらそこで会話はお開きになったようで、足音が響き、やがて消えていった。
…また絵画が消えた。
これで4枚目だ。
入ってきたばかりの新入生とはいえ、ここまで連続して不思議なことが起きると真相を探りたくなるものだ。
私は、無意識にポケットの中に入れていた紙切れを握った。
星導先輩からもらった紙切れは、結局なんなのかわからずじまいだった。
私は紙切れから手を離して、ナリ様の後を追って走り出した。
放課後、私は図書館に出向いた。
…といっても、何から手をつけるべきか、全く検討がつかない。
この図書館にはたくさんの本がある。
それこそ、数えきれない程だ。
たった数枚の紙切れから、どうやって本を見つけ出せと言うのだろう。
私は、手元にある紙切れをもう一度見た。
表には、詩が綴られていた。
ところどころ時が掠れていたが、読めない訳ではなかった。
詩を読み上げると、あることに気がついた。
…私は、この詩を知っている。
どこで見たのか、それを思い出すのには数分かかった。
…そして、気がついた。
確か、これは詩じゃない。物語の文だ。
この文は、人間の世界、いわゆるマグルの世界で昨年流行した小説「BLUE RIGHT」の序章の一文だった気がしなくもない。
…この図書館に、その「BLUE RIGHT」があれば、少しは何かがわかる気がする。
そう思って、私は図書館の中を歩き出した。
「B」と書かれている棚が見つかり、私はその棚の横の通路に足を踏み入れ、た。
…やがて、「BLUE RIGHT」は見つかった。
マグルの世界で見た通りの表紙だ。
私は本を手に取って、最初のページをめくる。
…ビンゴだ。
ページが乱暴にちぎられている痕跡を見つけた。
紙切れのシワを伸ばし、繋げてみると、見事にぴったりとはまった。
そう喜んだらいいものの、私はこの後何をすればいいのだろうか。
…もしかしたら、他にこの辺りに証拠があるかもしれない。
そう思って他の本に手を伸ばそうとした瞬間…。
気づけば、隣に誰か立っていた。
目線を上に上げると、メガネをかけた温厚そうな男子生徒が立っていた。
どうやら、レイブンクロー生らしい。
曖昧に返事すると、彼は苦笑した。
…Ike?私は、その名前に聞き覚えがあった。
どこで聞いただろう…。
思い出すために目線を落とすと、手にしていた本が目に入った。
…その瞬間、私は目を見開いた。
…彼の名前は、「BLUE RIGHT 」の著者の名前と完全に一致している。
そう聞くと、彼は照れたように笑った。
そして、彼は私が開いていたページに目を留め、眉をひそめた。
私が疑われるのはごめんだ。
私は急いでこの本を見つけた経緯を話した。
なぜか、話せば話すほど彼の目が煌めいていく気がする。
そういうことなら、と了承すると、彼は嬉しそうに笑って握手を求めてきた。
そう言って、彼は歩き出した。
私は、そっと本を棚に戻してから図書館を後にした。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。