「これにて、撮影すべて終了です。お疲れさまでしたーー!!」
スタッフの言葉に、みんな大拍手。
あとは、放送を待つのみ。
やっと、達成感が表れてきたそんな気がする。
あなた「藤ヶ谷くん。はいッ!コレ、最後ッ!!」
太輔「ん?なに?」
俺の手に渡されたのは、
よくデパ地下で売っている、
クルクルまるまってて、カリカリ食べるやつ……。
えっ、なんで?これを……。
あなた「撮影終わったらみんなに渡そうと思ってね。たしか藤ヶ谷くんそれ好きだよね」
太輔「あっ、うん」
あなた「私、ちゃんと雑誌でのコメント読んでるんだからね」
太輔「ありがとう……」
雑誌……。
そういえば、昔Wink Upにそんなこと載ったけ。
懐かしいな〜。
野々村「おっ、いたいた!」
受け取ったお菓子をそのまま持っていると、
俺とあなたちゃんと割るようにして、
慌てた様子で、あのマネージャーがやってきた。
あなた「もう、いったい何なの!!」
野々村「ちょっと用が入ったから、藤ヶ谷くんと帰ってくれない?」
あなた「えっ!?野々村、大丈夫?」
野々村「ちょっと実家に戻らなくてはいけなくなったもので」
突然の野々村さんの登場に、
あなたちゃんも困惑した様子だったものの、
理由を聞いて、少し安心したようで俺の方を見て、
少し微笑んでくれた。
あなた「わかった、早く実家に行きなさいよ。野々村!!」
野々村「ありがとうございますッ!!」
野々村さんは、俺に目を合わせると、
そのまま来た方へと戻って行った。
あなた「もぅ!何なの!いきなりそんなこと言って」
太輔「きっとなんか理由あるんだよ」
直接あなたちゃんには言えなかった。
俺が一緒に帰りたかったから頼んだなんてこと。
でも、上手くやってくれたよ。
なんか変な言い訳な気もするけど、
走り去っていく野々村さんの背中が格好良く見えた。
あなた「ねぇ、ホントにまた一緒でいいの?」
太輔「えっ!?」
あなた「いいの?また藤ヶ谷くんの車に乗っちゃって」
太輔「言いに決まってんじゃん。帰り道一緒なんだから」
あなたちゃんのことを見ると、
自然と眼が合う。
そのときの彼女は、いつもと違うさわやかな微笑みだった。
裕太「おーい!せっかくだから呑んでから帰ろうぜ〜」
俺たちの方に、叫びかけるタマ。
そんなタマ見て、俺とあなたちゃんはさっきと違う。
タマのなにかがおかしくて笑っていた。
太輔「バーカ!!俺は車だから呑めねェよ!お前もだろ!」
裕太「あっ、そっか」
タマが自爆している。
もうなんて暢気なやつだよ。
太輔「打ち上げはいつだっけ?」
愛莉「たしか最終回の放送日かな」
太輔「おっ、そっか。じゃあ行くか」
愛莉「うん」
タマたちの笑い声を後ろに、
俺たちはスタッフよりも早めにスタジオを後にした。
――駐車場
俺たち以外にいる人は誰もいない。
会話と、足音がコンクリートの地面から響いていた。
太輔「どうする?隣、座る?」
あなた「うん。そうする」
前のときは、ためらったわりに
今日は素直に言ってくれた。
ただ、それだけなのに嬉しい。
あなたちゃんがシートベルトをつけたのを確認してから、
俺の車は、日の沈みかけの町へと出て行った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。