数日後。
仕事終わりの楽屋。
いつもなら、誰かがふざけている時間。
けれど今日は、あなたが一人で窓の外を眺めていた。
突然声をかけられて、あなたが振り返る。
深澤が隣に並ぶ。
しばらく二人で外を見る。
あなたは少し驚いた顔をした。
深澤は笑った。
けれど、すぐに真面目な顔になる。
あなたの表情が、一瞬だけ止まった。
それ以上は聞かなかった。
ただ、あなたの頭を軽く撫でる。
深澤が離れていく。
あなたはその背中を見つめた。
小さな声だった。
その日の帰り。
あなたが廊下を歩いていると、後ろから岩本に呼び止められた。
岩本は少し迷ってから口を開く。
あなたは黙って岩本を見る。
あなたは答えなかった。
長い沈黙のあと。
岩本は何も言わなかった。
岩本はそれだけ言って、少し笑った。
あなたが顔を上げる。
あなたは何も答えられなかった。
ただ、静かに頷いた。
岩本が去っていく。
あなたはその場に一人残った。
そして、誰にも見られないようにスマホを取り出す。
画面には、以前と同じメッセージ。
『準備は進んでいます』
その下に、新しい通知が届いていた。
『変更するなら、今週中です』
あなたはその文章を何度も読み返した。
指が震える。
でも、返信はしなかった。
スマホを胸元に抱える。
誰に言うでもなく、そう呟いた。
その頃。
楽屋では、阿部、目黒、深澤の三人が残っていた。
目黒は少し俯いた。
誰も答えなかった。
その言葉だけが、静かな楽屋に残った。
そして翌日。
スタッフから、メンバー全員に一枚の紙が渡された。
そこには、
『今後の活動について、近日中に大切なお知らせがあります』
とだけ書かれていた。
9人は顔を見合わせた。
そして、その中にいるだけが――
何も驚かなかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。