「お前は本当に素晴らしい」
「特別だ」
「姉さん…」
「あなたさん」
「あなたちゃん」
「あなた」
「こっちだよ」
誰かが手を伸ばしてる
私の名前を呼んでる
人の気配がする
目を開けても暗い
何も見えない
…治療?
まさかメタルを除去するの?
そんなことをしたら…
犬飼が心配していたことが当たってしまった…そう思ったが、理由は想像の斜め上だった
あなたが懸念していたこと
それは、治療を経てみんなのもとへ帰ってくるのは私ではなくワタシかもしれないということ
ワタシは自分以外にもたくさんいた
治療が成功しなかったら?手遅れだったら?
ここに返されるのが自分じゃなかったら?
想像しただけで苦しくなる
私じゃないワタシがみんなのもとに帰るなんて死んでもごめんだ
そんなことが起きるくらいなら、私は治療なんて受けない
それに私が無事に戻れる保証は?
私をこんな目に遭わせた、私を作った人間のところで治療なんて、安全と言えるだろうか
温かくて大きな手が頭を軽く撫でる
私はいつからこの温もりを求めるようになってしまったのか
それはとても辛くて、悲しくて、でも覚悟があった
本物という言葉は、あなたにとって呪いに近いだろう
あなたが本物ならばどれだけ良かったか
どれだけ心が救われたか
治療は3日後行われることになった
心のどこかで不安が残っていて、心のどこかで諦めてて、それでも諦めきれなくて
沢山残してきた足跡をみんなが見つけてくれたから
私はまた生きるという選択をする
この決断にきっと何の後悔もしない
しばらく会えなくなるのは寂しくなるね
治療のため、私は施設へ出発した
護送車の揺れが背中に直に伝わる
それでも、やはり体の感覚は鈍くなっているのがわかった
体を蝕むメタルは相変わらず醜くて許せない
でもきっと戻るから
大丈夫な気がするから
みんながいるから
読んで頂きありがとうございます!


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。