第97話

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2023/03/09 13:23
それから、揃えられているご飯を食べたり、皆と談笑をしたりした。

乾杯だってして。

エースとデュースのいがみ合いや、初めて話をしたセベクくんのマレウスさん愛を沢山聞いた。

笑顔が耐えることはなかった。



エース「クル先の真似、いっきまーす!」




デュース「うーん…まぁまぁだな。」

エペル「先生の片隅にも置けないね。」

あなた「3点。」


エース「誰目線ですかぁ〜???」


何も気にせず楽しめたのは、初めてだ。

ただ今この瞬間が幸せで、同級生と馴れ合えるこのときに幸福感さえ感じた。


ジャック「おい、お前俺の皿に置いてあった肉取ったよな?」

エペル「…………ほっへはいよ!」

セベク「口に含んだまま喋るな人間!!」


あなた「あははっ!!」



いつかの日、周りの人を信用できず…心の内を明かせなかった自分に言ってやりたい。

お前は間違った選択をしていた、と。


ロエルしか頼れる存在が居なかったあの頃は、俺の視界が狭く暗かった。

でも、今は違うから。



エース「え‪”‬っ、お前何してんの?!」

あなた「……ソースかけてるだけだけど。」


エース「いやいやいやっ、不味いでしょ流石に!」

デュース「見た目やばいぞそれ…」


あなた「あっは、ナメてんの?はい、あーん。」

エース「え、」




エース「あ、うま。」

デュース「おい?!?!」






楽しい、としかいえなかった。



ロエルに着いていくかどうかなんて、この人たちを見ていたら気が変わるしか道はない。

優しくて、毎日が楽しく過ごせそうなこの人たちと。


俺は、一緒に居たい。


















あなた「決めたよ。____ロエル。」































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ジャック「あなた、お前も談話室でいいか?」

あなた「うん、全然大丈夫。」


料理は俺たちで全て完食し、そのままオンボロ寮に泊まることになった。

人数分個室があるわけでもなく、それなら全員で同じ部屋で寝ようということ。

布団を談話室に運ぶジャックに話しかけられ、頷いた。


エース「あなた!オレゲーム持ってきたからさ、勝負しようぜー。」

あなた「ん。んー……ちょっと待って。」


エースからの誘いにはっきりと答えず、もう暗くなっている外を窓から眺めた。

そこから見えるナイトレイブンカレッジを目にし、カーテンを閉める。


あなた「ごめん、ロエルに用があるから行ってくる。」

デュース「もう暗いが、1人で大丈夫か?」

あなた「誰に何の心配してんの。」





何とか言いくるめて、寝巻きのまま外に出る。

スウェット一枚で肌寒い気もするが、風呂上がりの火照った身体には丁度いい。


一度振り返りオンボロ寮を眺めたあと、ナイトレイブンカレッジ内へと向かった。

目指すは、学園長室。























あなた「失礼します。」


一応声をかけ、扉を開ける。

此処にロエルが居ると推測しての行動だったが、それはやはり当たっていて。

……魔法か何かでテーブルを設置し、それを囲うように談笑しているロエルと先生たち。


…………いや、いがみ合ってるのか?


ロエル「だからさぁ、お前いつまで昔のこと引きずってくれちゃってんの?」

サム「俺は昔のことを話しているつもりはないさ!なんてったって、君は今も変わらず悪餓鬼だろうし。」

ロエル「うっぜぇ〜!!!!!」



あなた「ガキ…………、」


テーブル席には4人。

ロエルにサムさん、学園長とクルーウェル先生が何かを呑みながら楽しんでいる。

その4人の中でロエルは最年少タイのようだから、こう見ると子供みたい。



クルーウェル「仔犬。よく来たな。」

あなた「あぁ、えと……大人の時間に来てしまってすみません。」


クルーウェル「それは別に構わんが。……エノレアに用があるんじゃないのか?」


グラスを片手に振り向いたクルーウェル先生が、何も動ずることなく言う。

ロエルは先生の教え子らしいから、こういう姿も不思議じゃないのかもしれない。


……そして、当然のように意図を気づかれている。






ロエル「…………………………決めたのか?」




あなた「!」



さっきまでサムさんと馬鹿みたいに楽しんでいたロエルも、俺に顔を向けると表情が変わる。

……俺がずっと見ていた、尊敬できるロエルの姿。




あなた「……うん。それを言いに来た。」


ロエル「案外早かったな。…もとより、答えはもう分かってたけど。」

あなた「性格悪いよ。」


ロエル「うっせ。」


















あなた「俺、____此処に残るよ。」





















もう“エノレア様”に引っ付いて生きていくのは辞めて、独立する。

この学園で、今まで知ることのできなかった感情を知りたい。



その応えを聞いたロエルは、満足そうに口角を上げた。


ロエル「あなたがホリデーに帰ってきたとき、ハグしてほしかったら言えよ。」

あなた「は?」


サム「9歳年下に何を……」

学園長「変わりませんねぇ。彼は。」

クルーウェル「憎めん部分ではあるがな。」





俺が学園で過ごしていく間、ロエルに会うことができないのは…少し寂しいけど。


いつかまた、ロエルの隣に立つことができる日に。










胸を張って居たいから。


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