何時間も待った。
すれ違う人はこっちを見向きもしない。
何故か、何も見ていないような空気のほうが居心地が良かった。
もう夜。
街は活気溢れてきて、大人達が足並みを揃えて歩いている。
アルコールの匂いとタバコの匂いが鼻を刺す。
惨めな自分を笑うことしかできなかった。
雨はとっくに止んでいて、今から帰ろうと思えば帰れた。
敢えて近道を選ばない。
行く場所なんて決まっていない。
足を進めて人工的に照らされた道を進む。
「ねね、何してんのー?笑」
「人でこんな時間って家出?笑」
湧くんと年の近い酔っ払いが絡んできた。
もう、怖いとも思わなかった。
どうせ、何もかも終わりにするから。
「へぇー?家来る?」
「はぁ?笑せっかく家に泊まればって言ってあげてんのに笑」
相手は感情の赴くままに口を開く。
アホらしい。
この人は真面目に生きてこなかったんだな、なんて心のなかで思っていた。
私も同じ人間の1人だ。
私と同じ部類にされて可哀想だけれど。
「おーい、何女の子に手出してんだよ」
「ごめんね、気をつけて帰るんだよ」
酔っ払いの知り合いらしき人が、頭を下げながらその人を連れて行った。
いっそのこと、されるがままになってもよかった。
そのまま消えたら、楽だったのに。
しばらく歩いていれば、日付が変わる頃に家についた。
シャワーを浴びて、テレビをつける。
どこも放送しているのはネットショッピングばかり。
明日、何しようだなんてあるかも分からない未来のことを考える。
学校に行こうか、行ったとて昨日学校を抜け出した事を怒られるのだろう。
あと一ヶ月辛抱すれば、また環境が変わって楽になれるのだろうか。
絶望を目の当たりにしてもなお、期待するのは人間の愚かさなのだろうか。
プルルルプルルル
スマホの振動音を頼りにスマホの場所を探す。
画面を見れば“湧くん”と表示されていた。
画面を開いて、履歴を見れば不在着信が数十件。
申し訳ないことをした。
電話越しではなく、はっきりと聞こえた扉越しの声。
急いで玄関の鍵を開けてドアを開く。
服と生活必需品と通帳に、勉強道具。
この家にある鞄全てに詰め込んで家を出た。
状況が飲み込めていない中、湧くんが隣に座ってタクシーに揺られる。
何故か、星野ない空が綺麗と思った。
月だけが霧に隠れている中、微かに光っている。
丑三つ刻だろうか、静かな都会はやけに不気味だった。
生きることを諦めた私には明日があるらしい。
死なせてくれない神様は私の事を嫌っているのか、はたまた母が死なせてくれないのか。
タクシーが止まって、湧くんに手伝ってもらいながら荷物を持ってマンションへと進む。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。