第33話

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2025/02/01 10:00 更新
あなた
__帰る
あなたの名字のその言葉で場が凍りついた。
コロシアイを強要されても、百田が危うくなっても、出口の可能性があるマンホールの存在が明らかになった時も、王馬に才能を疑われた時も。
ほとんどと言っていいほど発言しなかったあなたの名字が発したその一言で、全員が静まり返る。

獄腹の見つけたマンホール。あからさまに罠のような、それでも可能性が0ではないそこ。赤松の唱えた僅かな希望でなんだかんだと言いながらも全員がデスロードに挑んだ一回目の後。
諦めるべきではないと主張する赤松に賛同する一同の流れに、遠慮なくすっぱりと冒頭の言葉を吐き捨てたあなたの名字は地下から出ていこうとした。
赤松楓
赤松楓
……ま、まってよあなたの名字さん!
慌てて赤松が止めるも、あなたの名字は全く聞く耳をもたず梯子に手をかける。
正直、この場のほとんどがあなたの名字を止めようとしていなかった。あまり乗り気ではない人こそいるものの、あからさまに協力を毛嫌いしているのはあなたの名字だけだったため、流石に彼女を止めようとする人はいない。全員でここから出ると繰り返す赤松だけが、彼女を引き止める言葉を口にしたが、あなたの名字は当然のように無視をしてここから出ていこうとする。
最原終一
最原終一
__ッそんなの、キミじゃない!!
……と、同時に地下の空間に響く、その場の誰もが予想しなかった声。
全員が驚きの表情で彼を見た。勿論、終始無言で見ていた自分も例外ではなく。そしてその言葉を発した本人ですら、驚いたように目を見張って固まっていた。
あなた
……何。最原に私の何がわかるの
あなたの名字は酷く冷たい声と目で声の主、最原を見た。見た、というよりは睨んだという表現の正しい鋭い目に、最原はたじろぎ言葉を失う。
……自分でもなぜそんなことを口走ったのかわからない、という表情だ。

最原の言葉に賛同する人は誰一人として居ない。
それは当然だ。ここまであなたの名字が協力的な行動を起こしたことなんて一度としてないのだから。だからまるであなたの名字が普段、今のあなたの名字と正反対だとでも言うような口ぶりだった先ほどの最原の発言はどう考えてもおかしい。そもそも全員が会ったのはつい先程……のはず、なのだ。
最原終一
最原終一
……ごめん
あなたの名字の視線に耐えきれなくなったのか、最原は目を伏せてそう呟いた。あなたの名字は何も言わずに梯子の方へと体を向け直し、再びそれに手をかける。

雰囲気は、最悪だった。

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