(今日は…あそこのお店の新作リップを試しに行かなくちゃ)
ひし形のピンを二つとめれば完璧。
今日も可愛い。
数ヶ月前までは可愛いものなんて全く興味なかったのに、今じゃ常に可愛い僕でいないと不安でいっぱいになってしまう。
初めは苦労したなぁ、雑誌広げて徹夜でお洒落を勉強して。
まぁ今はどうでもいいや。
「行ってきます」
唯一返事をしてくれる彼は今日既に出掛けている為、何も返ってこないことに少し寂しく思いながらも部屋を出た。
(皆可愛いなぁ…)
あ、あれ雑誌で紹介されてたコスメだ。
あれは高くて諦めた人気のバッグ。
ちょっと外に出ればお洒落な人達で溢れかえるこの町で、普通に僕も馴染めていた。
ワンピースだって似合ってるし、もともと顔のつくりは良い自信があるから、どちらかといえば周りよりも可愛い筈。
ただ一つ直した方が良いところがあるとするならこの髪。
何度も伸ばそうかと考えたけど、何故かそれだけは躊躇ってしまった。
でもやっぱり伸ばそうかな。
あなたの好みの髪型はふわふわ編み込みロングだから。
彼の為だけに可愛くなったのに髪も合わせなきゃ勿体無いよね。
よし、今月お金結構ある筈だから今度エクステしようかな。
それから、、、
「そこのお姉さん」
振りかえると、いかにもって感じの人。
「!…はい、私ですか?」
「はい、お姉さんモデルとか興味ありませんか?
お綺麗で身長も高いし成功すると思いますよ」
「本当ですか?ありがとうございます。
けど私忙しくて、、、」
「…そうですか、」
愛想笑いをしてその場を去る。
ほら、僕は可愛い。
だからあなただって僕しか見てない筈。
「…ッ!」
突然ズキッとかかとに痛みが走った。
(痛い…ピンヒールサイズ合ってないかも……)
最悪。
道の端によってヒールに視線を下げると見事に靴擦れしていた。
このまま買い物は無理かな、。
「…はぁ……」
休もう。
何となく目についた可愛らしいカフェに入った。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」
「…」
笑顔で迎えてくれた店員さんに小さくお辞儀をして外から見えない位置の席に座る。
「ご注文は…」
「じゃあ…このイチゴラテ下さい」
「イチゴラテお一つで宜しいですか?」
「はい、ありがとうございます」
今度は大学生くらいの男子定員だった為ニコッと愛想笑いしておく。
すると彼は少し照れた様にはにかんだ。
何となく気になって目で追うと、彼が今度は次の注文の女子高生に微笑んだ。
彼女達のキャーキャー騒ぐ声が聞こえる。
けど普通にあなたのがかっこいい。
(あぁ駄目だ…あなたにしかかっこいいって思えないや)
あなた今何してるんだろう。
そんな事を考えていると、考えていた大好きな声が聞こえた。
「お待たせ、」
「!」
約束なんてしてないけど僕が入るの見つけて来てくれたのかな。
替えのヒール持ってきてくれたり?
そう思いながらもちょっとした悪戯心で気付かないふりをしてると、足音はどんどん近付いてきて、、、僕を通りすぎた。
「ぇ、」
「もうあなたっ!遅いわ‼️10分も待ったのよ⁉️」
「ごめんって、美香」
僕の奥のテーブルに座ったあなたは、別の女の子に話しかけた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!