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第36話

36話
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2026/03/02 14:57 更新





総監部の建物を出た瞬間、あなたは大きく息を吐いた。




あなた
っは〜……
あなた
今日のMVPは完全にあれだな
あなた
“こちらに支障をきたすな”
あなた
……いやいや、支障きたしてんのはあの部屋の空気と思想と加齢臭でしょ





あなた
スメハラで訴えたら勝てるかな
あなた
……いや、ワンチャン行けるかも?





ぶつぶつ言いながらスマホを取り出した、その時。





――ブブッ。





着信。




あなた
…ん?





画面を見る。





知らない番号。




あなた
えー……今それどころじゃないんだけどな





一瞬ためらって、でも今日は気分が完全に雑だった。




あなた
はいはーい
あなた
支障をきたすで有名な、篠月あなたでーす





電話口。





「…………」





やけに長い間。




あなた
え……あ、今のなしで
ホークス
……ははっ





その笑い声で、あなたは固まる。




ホークス
どうも
ホークス
ヒーローの、ホークスです笑
あなた
……は





脳内フリーズ、0.5秒。




あなた
……っ、やっば
あなた
ちが、今のはですね
あなた
ほら、知らない番号だったので、つい職業病というか!
ホークス
いやいや
ホークス
いつも通りで安心しました
あなた
どういう意味ですかそれ……
ホークス
愛想はいいけど口が悪い
あなた
それ悪口ですよね?
ホークス
褒め言葉です
あなた
……ヒーローって全員そんな感じなんですか?
ホークス
そんな感じ、とは?
あなた
……
あなた
いや、いーです。スイマセン





一拍置いて、ホークスの声が少しだけ真面目になる。




ホークス
さて、本題です
あなた
はい
ホークス
――追加の協力要請です





ピタっと、あなたの動きが止まる。




あなた
…へぇ





足が止まる。



あなた
私に?
ホークス
ええ。あなたに
あなた
……意外ですね
ホークス
そうですか?
あなた
だって
あなた
今日の現場、ヒーローが一人派手に吹っ飛ばされましたし
あなた
上の方、私のこと相当よろしくない評価してるんじゃないですか?





少しだけ、わざと嫌味を混ぜる。




あなた
正直、もう要請は来ないだろうな〜って思ってました





電話の向こうで、ホークスが軽く息を吐く。




ホークス
いやぁ…
ホークス
むしろ逆です
あなた
…逆?
ホークス
ヒーローが呪霊を視認できた。攻撃が通った
ホークス
それを、あなたが一人で成立させた
ホークス
しかも、致命傷ゼロ





ホークス
流石は元・特級だ
あなた
っ……
あなた
それどこで……まぁいいや





あなたは、ゆっくり空を見上げた。




あなた
……それ、ヒーローが怪我したって事実を帳消しにできるほどの評価ですか?
ホークス
ええ
ホークス
少なくとも、俺の中では
あなた
……ずいぶん、あっさり言いますね
ホークス
必要なのは、綺麗な結果じゃないですから
ホークス
“成立する現実”です





少し、声が弾む。




ホークス
正直いうと
ホークス
ぜひ、うちに欲しかった
あなた
………は?
あなた
ちょっと、待ってください
あなた
私、ヒーローでもなければそっちの味方でもないですよ?
ホークス
ええ。知ってます
ホークス
だからこそ、です
あなた
……





胸の奥で、何かが“カチッ”と音を立てた気がした。




あなた
…なるほど
あなた
便利な立場に、押し上げられたってわけですね
ホークス
象徴とも言います
あなた
……嫌な言葉
ホークス
褒め言葉っすよ
あなた
それ、今日二回目ですよ
ホークス
返事は急ぎません
ホークス
ただ、一つだけ
ホークス
あなたはもう、どちらからも無関係ではいられない





通話が切れる。





しばらく、スマホを見つめたまま。




あなた
…はは
あなた
最悪






あなた
呪術師としても、ヒーローとしても、中途半端なのに





小さく肩をすくめる。




あなた
中立って、ほんと忙しい立場だな

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