放課後。
必死に追いかけてくるあなたの横をすり抜けて、廉は一人教室を出ていった。
そこまで徹底的に無視されれば、あなたの勇気もくじけてしまう。
でもいったい自分の何が悪かったのか分からなくて、キュッと下唇を噛みしめた。
二人の様子を見ていた美桜と海人も、心配そうに近ずいてくる。
美桜に尋ねられ、あなたはゆるゆるとかぶりを振る。
海人の予想を聞いて、あなたはますます廉のことが分からなくなった。
原因が自分じゃないなら、何をそんなに怒っているんだろう?
全く心当たりがなくて、あなたは途方に暮れるしかなかった。
あなたを無視した廉は、ムスッとしながら昇降口前の大階段を降りていた。
すると踊り場付近に、会いたくもない奴を発見する。
それは紫耀。
別の高校に通うはずの紫耀が、なぜか廉たちの高校までやってきていたのだ。
下校中の女子生徒も「あれ誰?」 「超イケてる!」と騒いでいる。
そのまま紫耀の前を通り過ぎようとした廉だったが、
聞き捨てならないセリフに思わず足を止める。
━━━━聞いてねーし。
昨日の夜、家の前で二人が話していたのはそういうことだったのか、と、
廉はイライラしてくる。
廉が何を言っても、紫耀はマイペース。
いや、それどころかやっぱりあなたにちょっかいを出そうとしている。
廉は下りかけた階段を引き返すと、
━━━━ドンッ!
紫耀を脅すために、その体を無理やり壁に押しつけた。
しかし廉の考えなど、紫耀にはお見通しのようだ。
紫耀はにっこり笑って、廉の手を下げさせた。
その余裕の笑みを見て、廉はとうとうキレる。
廉の気迫に紫耀も負けていない。真正面から怒りをぶつけられても、その笑顔で受け流す。
正論を言われて、廉はカッとなった。
肩にかけていたカバンを放り出し、紫耀の胸ぐらをグッとつかむ。
まさに男と男のプライドを賭けた、ガチバトル!
下校中だった他の生徒も二人の険悪な空気に驚いて「ケンカ!?」と騒ぎだした。
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一旦切りますー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!