連絡先を交換した翌日から、ホークスは律儀だった。
『おはようございます』
『今日も忙しい?』
『昨日の店の近く通ったんですけど』
あなたは通知を見て、スマホを伏せる。
嫌じゃない。
でも、すぐ返すほどでもない。
昼の仕事を終えて、夜。
店のカウンターに立ちながら、ようやく返事を打つ。
『忙しいです』
送信。
それだけ。
すぐに返ってくる。
『了解です!無理しないで』
あなたは既読をつけて、画面を閉じた。
数日経つと、それは“塩”になった。
『今日は飲まないんですか?』
既読。返さない。
『今度、仕事じゃない一杯どうです?』
既読。返さない。
罪悪感は、ない。
依存しない。
期待させない。
それが自分のやり方だ。
常連に言われて、肩をすくめる。
そう言いながら、スマホが震える。
『既読ついてるのに返ってこないの、珍しいですね』
『俺、既読スルーは自分の良いように受け止めますからねー』
あなたは思わず笑った。
でも、返さない。
ホークスは追撃してこなかった。
催促もしない。
拗ねもしない。
ただ、数日に一度だけ、ぽつりと来る。
『元気なら、それで』
その一言が、逆に厄介だった。
店に立っていると、ふと考える。
もし彼が、
もっと分かりやすく迫ってきたら。
もし、重たい言葉を投げてきたら。
こんなに無視できただろうか。
店長が声をかける。
即答する。
スマホが、また震えた。
『今日は店、混んでます?』
あなたは画面を見つめてから、初めて指を動かした。
『普通です』
すぐに返事が来る。
『了解。また席空いてたら』
それ以上は、来なかった。
塩対応。
既読スルー。
それでも切れない、この距離。
あなたはグラスを置きながら思う。
そう思った時点で、もう少しだけ、面倒になってきていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。