黒尾先輩がいない
そんな信じられない事実を抱えたまま数日がすぎた
葬儀なども終わって
1人で家に帰る
春を告げる風が
制服のスカートから出た足を撫でる
黒尾先輩が死んだ
悲しい
苦しい
どうにかなる
そう思って胸が締め付けられるのに
涙は出なかった
まだ信じられないから。
そこの角から
『あなたちゃん!』
って言って飛び出してそうだから。
寝癖を気にして鏡を見てそうだから。
私を探してくれてるんじゃないかって
そう思ってしまうから。
ーポツポツ
ーザァァァァ
でも、今の私には
思い出の中にしか黒尾先輩は居ない
傘を貸してくれた
私のために怒ってくれた
いつだって、私の味方でいてくれた
そんな黒尾先輩は
かけがえのない私の1部だった
それなのに。
冷たい雨が私を侵食する
風邪をひいたって
くしゃみをしたって
もう、二度と
会えないのに。
そうだ、
会えないんだ。
今更泣いたって
どうしようもないのに。
会いに来て
もう一度
あなたに触れさせて。
溢れ出す感情は
涙になって私の中から飛び出す
あなたを探している私を
もう一度
抱きしめて。
青く滲んだあなたとの思い出を
いつまでも、
いつまでも忘れられないのは
きっと、私が
あの日々をもう一度
求めているから。
雨は容赦なく私をうちつける
黒尾先輩
私が、おばあちゃんになるまで
シワシワになるまで。
あなたの事を忘れない
だから、
いつか私に教えてくださいね
あなたの知っている空の青さを。
『君の知っている空の青さを知りたいから』
END














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!