第17話

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2022/11/05 16:09
スカー
(ふむ…大柄な身体に似合わぬ…軽いフットワークと…常人ばなれの破壊力。更に錬金術とのコンビネーション。たしかにやっかいではあるが…。)
アームストロングの連続した攻撃を腕で防ぎ、やがて、壁際まで追い詰められる。
アレックス・ルイ・アームストロング
追い詰めたり!!
スカー
(…ここぞというところで大振りになる!!)
大きく腕を振り上げるアームストロングの行動を見極め、スカーは右手の関節を鳴らす。
スカー
(ここだ!!)
スカーは剝き出しになったアームストロングの腹に手を伸ばすが、アームストロングは巧みなステップで後ろに下がった。
スカー
(此処まで追い詰めておきながら間合いを開けるだろ!?)…!!
後ろに下がったアームストロングはにやりと笑った。スカーが何かに気づいたときにはライフルを構えるリザがいた。リザが引き金を引き数発撃つ。するとスカーのサングラスに当たり、サングラスは地面に落ちる。
ロイ・マスタング
やったか!?
リザ・ホークアイ
速いですね。一発かすっただけです。
スカーのこめかみから血が流れる。スカーは睨みつける。
あなた
…!?
アレックス・ルイ・アームストロング
褐色の肌に…赤目の…!!
ロイ・マスタング
…イシュヴァールの民か…!!
スカー
…やはりこの人数を相手では分が悪い。
ロイ・マスタング
おっと!この包囲から逃れられると思っているのかね?
ロイはそう言うと手を上げると憲兵たちが銃を構える。するとスカーは右手を地面に当て、大きな穴を開ける。
憲兵
うわあああ!!
スカーは開けた穴から地下水道へと逃げて行った。
ジャン・ハボック
あ…野郎!地下水道に!!
ロイ・マスタング
追うなよ。
ジャン・ハボック
追いませんよ。あんな危ない奴。
ロイ・マスタング
すまんな。包囲するだけの時間をかせいでもらったというのに…。
アレックス・ルイ・アームストロング
いえいえ。時間かせぎどころか…こっちが殺られぬようにするのが精一杯で…。
マース・ヒューズ
お?終わったか?
路地から顔を出したヒューズがアームストロングに話しかける。
アレックス・ルイ・アームストロング
ヒューズ中佐…今までどこに…!!
マース・ヒューズ
物陰にかくれてた!!
ロイ・マスタング
おまえなぁ…援護とかしろよ!
マース・ヒューズ
うるせぇ!!俺みた!!いな一般人をおまえらデタラメ人間の万国ビックリショーに巻き込むんじゃねぇ
ロイ・マスタング
デタ…。
マース・ヒューズ
オラ!戦い終わったら終わったでやる事沢山あるだろ!!市内緊急配備…人相書き回せよ!!
ヒューズの言葉に青筋を立てるロイを横目にヒューズは憲兵たちに指示を出す。
マース・ヒューズ
…ったく。あんまりムチャするなよ。あなた。
あなた
んー。善処はするけど…無理かも?
少し考える素振りはするも、苦笑いで言うあなたに、ロイは頭を抱え、ヒューズは苦笑いをする。
ロイ・マスタング
まったくこんなに怪我をして!!
あなた
私は別に…。それに…これくらいどうってこと…。
ロイ・マスタング
相手は国家錬金術師殺害犯なんだ!一歩間違えれば殺されていたんだぞ!?もっと自分のことを大切にしなさい。
あなた
…うん。ごめん。
ロイの剣幕にあなたは取り繕った笑みを浮かべた。それが、ロイやヒューズにバレていると分かっていても。
ロイ・マスタング
全く…。
あなた
大丈夫。…大丈夫だよ。…っ!!
マース・ヒューズ
おっと。
あなたは立ち眩みを起こし、倒れそうになったところをヒューズが支えた。
ロイ・マスタング
何故、わざわざヒューズの方に倒れる?
あなた
え?
ロイ・マスタング
私の腕の中ではダメなのか?
そう言ってロイは両手を広げた。
あなた
お断りします。
ヒューズはあなたを支える腕の力を少し強める。
あなた
血…ついちゃうよ。
マース・ヒューズ
気にすんな。
あなた
…あー血が足りない気がする。
そう言ってあなたは手に持っていた紅剣を手放す。すると、その紅剣はみるみる形をなくし、赤い液体へと戻っていく。
マース・ヒューズ
そりゃそうだろ。…あまり、心配かけんなよ。あなた。
あなた
わかってるよ。…ごめんね。…でも…あの子たちが本当に心配だったの。
ヒューズはそう言ったあなたの頭を優しく撫でた。
エドワード・エルリック
アルフォンス!!
エドは慌ててアルに駆け寄る。
エドワード・エルリック
アル!大丈夫か!?おい!!
アルフォンス・エルリック
…この…バカ兄!!
アルはエドを思いっきり殴り、殴られたエドは頬を押さえながら唖然とする。
アルフォンス・エルリック
なんで僕が逃げろって言った時に逃げなかったんだよ!!
エドワード・エルリック
だから、アルを置いて逃げるわけに…。
アルフォンス・エルリック
それがバカだって言うんだーっ!!
アルはそう言って再びエドを殴る。
エドワード・エルリック
なんでだよ!!俺だけ逃げたら殺されたかもしれないじゃんか!!
アルフォンス・エルリック
殺されなかったかもしれないだろ!!
口喧嘩をするエドとアルをロイ達が眺める横で、あなたはヒューズから手渡された黒いコートを羽織る。
あなた
(どれだけ暗闇に沈んでも…何度だって2人いれば…乗り越えられる。…そう…あの2人だから…。)
アルフォンス・エルリック
生き延びる可能性があるのにあえて死ぬ方を選ぶなんてバカのする事だ!!
エドワード・エルリック
あ…兄貴にむかってあんまりバカバカ言うなーっ!
アルフォンス・エルリック
何度でも言ってやるさ!!生きて生きて生きのびて…もっと錬金術を研究すれば僕たちが元に戻る方法も…ニーナみたいな不幸な娘を救う方法もみつかるかもしれないのに!!
意地が…矜持が爆発して、アルはエドの胸ぐらを掴んで大声を上げる。そんな中、あなたは少しずつ2人に近づく。
アルフォンス・エルリック
それなのに…その可能性を投げ捨てて死ぬ方を選ぶなんて…そんなマネは絶対に許さない!!…あ!!
すでにボロボロだった右腕は限界を超え、ベキャと取れる。
アルフォンス・エルリック
ああっ!!右手もげちゃったじゃないか!!兄さんのバカたれ!!

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