side : 碧海 ✈️
ライブの日のあなたちゃんは、だいたい決まってる。
会場に着くなり、誰よりも先に声を出す。
両手いっぱいの差し入れを抱えて、
スタッフさん一人ひとりに笑顔で渡していく。
正直、あのテンションを朝から出せるの、
普通にすごいと思う。
その一言で、周りが一気に和むの、
何回見てもすごいなって思う。
思わずそう言ったら、
って、何でもないことみたいに言う。
準備に入ると、今度は一気に静かになる。
メイク台に座って、イヤホンつけて、
世界をシャットアウト。
でも完全に閉じてる感じじゃなくて、
ちゃんと“集中”してるのが分かる。
メイクが終わると、端のスペースで立ち上がって、
音楽流しながら、ダンスを一曲分だけ。
確認するみたいな動き。
でも一つ一つが丁寧で、抜けがない。
毎回心の中でツッコミ入れてる。
で、問題はそこから。
本番一時間前。
みんなが衣装確認だ、
立ち位置だってバタバタし始めた頃、
あなたちゃんはもうソファに座ってて。
気づいたら、
寝てる。
思わず声出た。
そのタイミングで、ぱちっと目が開いて、
ちょうど目が合う。
ちょっと眠そうなのに、ちゃんと笑うのが反則。
前からずっと不思議で、聞いてみた。
あなたちゃんは、少しだけ考えてから、
「んー……」
って天井見て、
本当に、それだけ。
でも、なんか全部持っていかれた。
緊張しないわけじゃないはずなのに。
怖くないわけないのに。
それよりも先に、「楽しい」が来てる。
って、得意げに笑って、また目を閉じた。
その姿見て、
甘やかされてるけど、
守られてるけど、
この人、自分の足で立ってる。
本番直前。
スタッフさんの声で、あなたちゃんが立ち上がる。
さっきまで寝てたとは思えないくらい、
背筋が伸びてて。
その一言で、空気が締まる。
ステージに向かう背中を見ながら、思う。
……やっぱ、ライブ好きな人は強い。
あなたちゃんは、
本番のために寝るんじゃなくて、
楽しむために、ちゃんと休んでるんだ。
それができるの、ほんとすごいっすよ。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。